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特別取材

<副島隆彦の「学問道場」>国家戦略論の背景 21世紀の日本を考える(2)
特別取材
2009年7月15日 08:00

<日本の現状>
 次に、日本の現状を述べる。
 私たち日本人は、かつて東欧諸国が、1991年に崩壊する以前はソビエト帝国(ソビエト連邦)の「衛星国(サテライト・ステイツ)」であると学校の教科書でも習い、そのように理解していた。
 だが、では日本はずっと米国の衛星国ではなかったのか、という内心の疑問に対しては、あえて目をつぶり、回答を先送りして生きてきた。
 先の戦争で日本は米国に完膚なきまでに叩きのめされ、おまけに残虐な原子爆弾まで投下されて敗戦した。日本がポツダム宣言を受諾して無条件降伏したとき、世界中の人々は日本国民が命乞いをしたのだと考えた。頭を下げ、生き延びさせてもらった、と。
 だが私たち日本人はそうではない。あれはただの普通の「終戦」だと思ってきた。戦後、米国に屈服して生きてきた日本の伝統保守派(日本民族の優等性を信じる)の人々の深く傷ついた自尊心を私は理解できるし、その一方で、日本が米日同盟を基本にすえて貿易立国、経済大国となって生き延びてきた現実直視型の方向判断も間違っていなかったと明言することができる。
 その代わりに、日本はいろいろな代償を払い続けた。
 米ソ対決の冷戦時代に、米国の世界覇権の一翼を担うべく属国となって諾々と生きてきた。
 日本の現状を一言でいい表すと、世界帝国アメリカの属国のひとつ、ということになる。これは何も日本だけのことではなく、私の研究では、1970年代を境にフランスや英国もアメリカの(部分的)属国と化したのである。
 私が属国日本に対して、世界帝国アメリカという時の、世界帝国の「帝国」という概念は、「領域支配」を含まないのだ、ということをここで理解してもらいたい。
 「帝国」というのは、例えば、高校・世界史地図帳の中に、ペルシア帝国の最大領土とか示して、世界地図上に赤色でぺったり塗ってあるが、実際の歴史上の帝国(覇権国)はあのようなものではない。
 属国の服属関係にもいろいろなものがあり、完全に武力制圧された国から、政治的には独立したまま経済交易だけが帝国に従属しているというような場合もある。
 従って、一様に地図を赤色で塗りつぶしたような感覚で帝国というものをとらえてはならないと思う。すなわち、帝国とは領域支配を意味しないのである。
 これで、日本の現状の概略を述べることができた。
 次に、これからの日本の国家像を考えるにあたり、避けては通れない大前提について述べていきたい。

(つづく)

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