100年に一度と言われている大不況のなかで、業種を問わず上場企業を含めて前期決算が大幅欠損となった企業が非常に多い。このような状況下、過去メインバンク主導により再生を果たした企業も欠損計上を余儀なくされている。今回、地場企業である(株)ヤマウにスポットを当て、2009年3月期決算および今期の見通しを検証する。
メインバンク福岡銀行による事業再生を果たしたが…
(株)ヤマウ現代表の権藤勇夫氏は住友商事㈱の出身で、関西プロジェクト推進室長を経て1996年8月に同社へ入社。ヤマウが借入過多に苦しんでいた03年当時、創業一族である伊佐崇氏と伊佐紘八郎会長が、メインバンクである福岡銀行からの支援と引き換えに、経営責任を取って退陣した。これを受け、権藤氏が現職に就任したという経緯がある。
業種柄、同社の業績は公共工事の動向に大きく左右されるが、当時は公共工事の件数、請負金額ともに前年割れが継続しており、最悪の環境に置かれていた。このような状況を打開すべく、新中期経営計画においては、公共工事減少に伴う売上減少の防止、新規分野の開拓、減損会計の適用などにより、過去の負の遺産を一掃して収益改善を目論んでいた。しかし04年3月期、約41億円の一括損金処理により、約2億5,000万円程度の債務超過状態となる見込みにあった。そこで福岡銀行は、債務の株式化6億円(デッド・エクイティ・スワップ)の支援を行なったのである。
また、同行は資金面の支援だけではなく、ふくぎん保証(株)出身の中村健一郎氏を取締役管理本部長に就かせ、人的支援も積極的に実施したのである。
その後、同行の強力な支援により徹底したリストラを実施し、06年3月期には連結ベースでも累損を一掃したのである。
【久米 一郎】