<『利益第二主義』を貫く㈱マキオの牧尾英二氏>
阿久根市には全国に情報発信して注目を集めている巨人が二人いる。一人は経営者だ。A-Zスーパーセンターを経営している(株)マキオの牧尾英二社長だ。もう一人は阿久根市の首長・竹原信一氏である。二人に共通しているのは、マスコミを使って全国ブランドになる魂胆はない(テレビ・マスコミ取材を受けたが、「興味本位でしか報道せず、こちらとしては迷惑だ」と怒っている。東国原宮崎県知事とは人間の威厳性がまるで違う)。
二人に共通しているのは、過去の常識を否定することである。(株)マキオに関しては、弊社が幾度となくレポートしてきた。今年1月には、全社員で現地視察をして顧客本位の最前線を学んだ。牧尾氏の経営手法というよりも経営哲学は独特のものだ。彼の歩んできた生き様の人生観の集大成を経営に具現化している。「個人、企業の儲けは二の次。地元の人たちの不便さを解消させる役割が本筋だ」と実践している。
5,000人から3万人の商圏には、大手スーパーは魅力を抱かず関心も示さない。「じゃー、ここに生活している住民たちはどこで買い物をすれば良いのか。生活の維持ができないぞ」と牧尾氏は怒りを感じた。と同時に、自分の使命を鮮明にさせた。阿久根市にある「A-Zスーパーセンター」には35万点のアイテム数がある。田舎の商圏では考えられない数だ。「1年で1回でも買い求められるのであれば、常に用意すべし」ということで在庫の数が膨張してきた。「お客には不自由させない」哲学を貫いている。
これだけの在庫があれば緻密な販売管理が必要だが、一切行なわない。店員、セクションには販売数字のノルマはなし。マーケティングにも頼らない。ここまで有名になれば、地方自治体からも誘致の声がかかるが断る。牧尾氏が出店を決めるポイントはただ一つ。「買い物をするのに、一番不便で困っている地域」である。現在稼動している店は3店舗だが、近々5店になる。阿久根と同様の鹿児島県と宮崎県の田舎がターゲットだ。
常識経営では大型小売店が進出しない消費不毛ゾーンに、牧尾氏は採算を度外して小売インフラを提供した。この徹底した使命感による出店の行為が、住民に圧倒的な支持を受けた。よーく探索してみればわかる。全国には阿久根と同様に、大資本から見捨てられたローカル地域は無限にある。小売業の関係者は目ざとい。「市場があるのなら」とマキオ詣でが流行り出した。この「利益を二の次にする」非常識経営手法でなく、経営哲学が各方面から注目されて研究され出したことに牧尾社長は直面している。同氏の内心は、はらわたが煮えたぎっているのではないか。「貴様たちは儲けのためにやっているが、俺は違うぞ。地域住民のために奮闘しているのだ」と。激変時代には既存の常識である『自利を捨てた』非常識経営手法がクローズアップされるのは面白い。
そして、阿久根市のもう一人の巨人・竹原市長は、給料を80万円から48万円に下げた。40%のカットだ。前回、この給料カットをめぐって市議会からリコールを突きつけられた。しかし、竹原氏が市長選で復活を果たした。さすがに市議会も渋々と承認をするしかなかったのだ。
~つづく~
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