(株)シノケングループは、NISグループの子会社が業務執行組合員である投資事業組合へ第三者割当増資を決議した。現在の発行済株式総数を上回る割当てにより、創業社長である篠原英明氏は、実質的にオーナーとしての影響力を失ったと言える。今後、同社はどのような道をたどるのか、これまでの経緯を振り返りながら検証してみたい。
「シノケン」の名前が一躍有名になったのは、05年11月の姉歯秀次による構造計算書偽装事件である。事件の当事者として篠原氏が衆議院国土交通委員会に参考人招致までされた。同社はこの問題でつまづくまで右肩上がりの業績を続けてきた。ここ10年の株価最高値は、事件が発覚する1週間前の56万5,000円である。しかし、現在の株価は1万円台前半。さらに、今回決定した第三者割当増資により、さらに株価は下落する可能性が高い。現時点でもピーク時の約50分の1の水準である。株価を大きく毀損した同社に、かつての勢いを見ることはできない。
偽装事件そのものが株価下落要因であったが、偽装が明らかになった7棟のマンション解体費用として29億円が必要になった。メインバンクだった福岡銀行から25億円の融資を受けて資金調達のメドは立ったが、事件で事業そのものが足踏み状態となったため、投資ファンドに対してMSCB(転換社債型新株予約権付社債)の発行に踏み切った。これで20億円を新たに調達したが、さらに株式の希薄化から株価は低下を続けていくことになる。
【緒方 克美】
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