経営環境の悪化と公共投資縮減、資材高騰
2006年3月期に累損を一掃した(株)ヤマウであったが、09年3月期は米国のサブプライムローン問題に端を発した金融恐慌、世界同時株安、原材料価格の高騰などによる世界的な景気悪化により、日本経済は奈落の底に落とされた。これにより、同社を取り巻く環境は悪化の一途を辿り、公共工事の圧縮による同業者間の競争激化、資材価格高騰の影響をまともに受ける事態となった。同社の場合、公共工事の比率が約90%を占めていたことから、公共工事の圧縮は直接影響がおよんだのである。
コンクリート製品製造・販売事業(土木製品・景観製品・レジンコンクリート製品の販売)は同社の基幹事業であるが、建設投資の縮減傾向が続く状況下で、公共工事の圧縮により大打撃を受けた。
また、資材価格の高騰によるコストアップは経営努力の範疇を超えたもので、製品価格への転嫁が徐々に実績として現れ始めたが、収益は赤字計上を余儀なくされている。その結果、コンクリート製品製造・販売事業の売上高は、129億2,500万円(前期比1.5%減)、営業損失9,100万円(前期1億9,900万円の営業利益)となったのである。
同社が属しているコンクリート製品製造業界は、補正予算の執行によりある程度は業績回復が期待できると思われるが、社会資本の成熟化、ならびに国や地方自治体の財政悪化などにより、建設投資に期待することは困難と予想されている。
このような状況の下、同社は受注拡大、コスト競争力と採算性の向上、品質および生産性の向上、新商品の開発等による需要創造などに積極的に取り組み、利益確保に注力していくとしている。
地元金融機関の貸し手責任
100年に1度と言われる大不況のなか、今年度に入っての中小・零細企業の倒産件数については、昨年10月末から利用が開始された「緊急保証制度」により一定の効果が出て減少しているようだが、中堅企業は前年同月比で増加している現状にある。
日本銀行は7月6日、全国9地域の景気判断を上向きに修正。九州・沖縄は一段落した在庫調整と輸出の回復などにより、「下げ止まりつつある」と発表している。
しかしながら地場中小企業の景況感は、依然として先行きの見通しが不透明である。金融機関の09年3月期の業績も、不良債権の多発に伴う引当負担の増加などにより、赤字計上を余儀なくされているところも出ている。このような状況では、中小企業に対するプロパー融資はますます厳しくなっているのが現状である。
現在、過大債務や経営環境の悪化により、苦境に陥っている地元中小企業は数多い。中小企業を取り巻く経営環境はますます厳しくなっており、蓄積した信用力、優れた技術、得意先などを持ちながらも、資金繰りに窮して倒産に追い込まれるケースが多発することが予想される。
このような地元中小企業を救い、再生させることができるのは、地元金融機関であることを強く認識することが必要である。
【久米 一郎】
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