MSCB(転換社債型新株予約権付社債)はハイリスクな資金調達方法だ。同社は2005年12月13日開催の取締役会においてMSCBの発行を決議。12月30日に払い込みが完了した。発行価額の総額は20億円であり、当初の転換価額は12月13日の32万5,000円を基準として30万円(その後修正)に設定、割当先は投資ファンドのサンドリンガム ファンド エスピーシーリ ミテッドだった。サンドリンガム社は、英領西インド諸島ケイマン諸島に本社を置く英国系の投資ファンドだ。
通常の転換社債(CB)は株価の値上がりがある程度期待できる企業、もしくは株価が上がらなくても確実に満期に償還できる企業でなければ引受先がない。つまり、株価が上がることが期待できない企業、資金繰りに余裕がないような企業ではCBの発行が難しくなる。だがMSCBになると、そうした企業でも発行できるし、引受先も現れる。株価の修正が行なわれることで引受先にメリットが生まれるためだ。
一般的にMSCBの発行は貸株とセットになっているケースが多い。MSCBの引受先は借りた株式を高値で売却し、株価が下がったところで社債を株式に転換し返却する。この売却額と転換価額の差が利鞘になるのである。引受先はこれを繰り返しながら市場へ株式を放出する。無利息であり、社債を保有し続けるメリットはないためだ。このため、株の希薄化から株価下落のスパイラルに落ち込んでいく可能性が高い。MSCBが「麻薬」、「諸刃の剣」と揶揄される所以である。構造計算書偽装事件で負った傷口を塞ぐために図られたこの資金調達が、徐々に体力を奪い、同社の株価下落が加速した。
【緒方 克美】
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