<高速道路を無料にして福岡の一番の強み活かす>
―福岡の強みは何でしょう。
山﨑 福岡の強みというのは、アジアに近い、空港が近い、海がある、この3点でしょう。その中でも福岡の最大の利点は、上海まで1時間半で行けるということです。それが最大の「売り」ですから、第2空港建設の話もありましたが、そうではなく、福岡空港と北九州空港と佐賀空港で役割分担をすべきだと思います。ビジネス便は福岡、特定のビジネス便は北九州、農業を中心とした輸出を佐賀からやる。そしてその間をつなぐ。高速道路を無料にすれば、各空港が1時間以内でつながります。アメリカでも、ニューヨークから高速道路で30分ごとに空港があって、それぞれの役割を担っています。
―上海には一日最大5便も飛んでいますし。
山﨑 5便も飛んでいるんですね。東京より近いわけだから、福岡の最大の強み=空港にすぐいける街としてアイランドシティを開発するしかないですよ。中村調理製菓専門学校の中村哲さんから、今度韓国に進出する話を聞きましたが、韓国も福岡から1時間で大阪出張と同じ感覚で行けますね。これが福岡の強みですよね。
かつて博多商人がアジアとの交易をやって博多は国際都市たりえたのですから、素質は十分備えていると思います。
<アジア都市復活へ西を向いて仕事を>
―著書を拝読しましたが、これからの日本の方向性として、どうやっていけばいいんでしょう。
山﨑 例えば、韓国のソウルに福岡から企業が何社進出していると思いますか?
―意外と少ないんじゃないかと思いますが。
山﨑 ゼロですよ。さきほどお話した、中村調理製菓専門学校の中村さんが初めてだそうです。
―中国であれば例を聞きますけれども。
山﨑 中国もちょこちょこというところでしょう。博多は鎌倉時代が一番栄えていたんです。その当時、謝国明などがいたころの博多は完全な「アジア都市」だったんですね。博多の土地の半分ぐらいを中国人が持っていて、最先端の文化を伝え、産業を伝えた。都市計画も中国人がやったんです。
博多の人間と中国人が結婚して、混血都市になっていった。それぐらい思い切ったアジア化を昔の人はやったのに、今やそれがすっかり薄れてしまっているのではないかと思います。
だから、私が言いたいのは、敢えて辛口になりますが、そろそろ東京を向いて仕事をするのはやめたほうがよいのではないかということです。東を向くのをやめて、西を向いたらどうですか、西のほうが近いのではないですか、と。
戦後の日本はソニーやトヨタやホンダなどの製造業で繁栄しました。太平洋ベルト地帯に工場を作ってアメリカにどんどん輸出した。ところがこの工場がみんな出て行ってしまいました。今、世界の工場は中国になった。これからは東のアメリカではなく、西のアジアを見るべきです。
この現実を受け止めていないから日本の没落が止まらないのです。「改革」とか「小さな政府」とかをやっても、日本は復活しません。製造業が中国に行ってしまったのに東京一極集中を進めてしまったのは失敗だったと思います。
―最終的に仕上げてしまいましたからね。
【文・構成:烏丸 哲人】
山﨑養世(やまざき・やすよ)氏
1958年生まれ。福岡市出身。東京大学経済学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)取得。大和証券を経て、ゴールドマン・サックス投信社長として同社を外資系トップの投信会社に育てる。ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)等を歴任。02年、同社を辞し、シンクタンク 養世事務所を設立。金融・財政・国際経済問題等の調査・研究、政策提言を行なう。「高速道路無料化」を02年から提唱している。著書に『次のグローバル・バブルが始まった!』『日本「復活」のシナリオ~「太陽経済」を主導せよ!』(ともに朝日新聞出版)ほか。
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