博多保健所が、6月5日に板付小学校から5人以上の発熱による欠席が出たとの報告を受けながら、「新型インフルエンザではない」と判断した理由について同保健所に確認した。同保健所の担当者は、海外への渡航歴及び関西への移動の有無なども含め「総合的に判断」したという。医療機関によって、数日前から同小児童にA型陽性が出ていることが報告されていたにもかかわらず、である。これでは厚労省が5月22日に出していた「職場、学校または家庭などにおけるインフルエンザ様症状の発生状況・インフルエンザ様症状を呈している者が、患者の周囲に3 名以上いる場合」との遺伝子検査実施の判断理由を無視したことになる。
5月16日に神戸で国内初の感染者が確認されたケースでは、海外渡航歴がなかったことが明らかになっていたことを忘れてはならない。さらに、6月5日、6日の段階ではすでに福岡県内で感染者が発生しており、いつ感染が広がってもおかしくない状況にあったのだ。医療機関からの警告や小学校からの報告を受けながら「新型ではない」と判断したのは明らかな間違いであるが、博多保健所は頑として「間違い」を認めようとしない。
ところで、博多保健所が新型インフルエンザか否かについて判断した時の基準は、極めて曖昧である。同保健所の永野美紀健康課長の名刺には「医学博士」と記されていたので、さぞや医学的・論理的な説明を聞くことができるだろうと思っていたが、残念ながら「たとえ話」の繰り返しで、「総合的に判断」がどのように下されたのか、まるで理解できなかった。記者の頭のできがよほど悪いのか、訳の分からない話で核心部分を隠蔽しているかのどちらかということになる。
もう一度、永野医学博士とのやりとりを振り返ってみる。記者は何度も紹介してきた6月6日の「新型インフルエンザ相談票」などを例に、
1.春日市内の医療機関から、新型インフルエンザの遺伝子検査を依頼されながら、なぜ拒否したのか。
2.医療機関から遺伝子検査の要請があった折、板付小の子ども達に新型インフルエンザの可能性があると指摘されながら、なぜ「新型ではない」と判断したのか?
3.A型陽性を示す子どもが多数いると分かった以上、5月22日の厚労省の通知に従い、『職場、学校または家庭などにおけるインフルエンザ様症状を呈している者が、患者の周囲に3 名以上いる場合』に該当し、遺伝子検を実施するべきだったのではないか。
以上の3点について、説明を求めたものである。
しかし、永野博士はそれぞれの問いに対し、次のように答えている。
1.春日の医療機関は「筑紫保健所」の管轄だから、患者が博多区在住の福岡市民であっても遺伝子検査はできない。
2.板付小に対する「健康調査等」によって新型ではないと判断した。
3.擬似症患者の周囲に3人以上の擬似症患者がいるからということだけで遺伝子検査を行うわけではない。渡航歴などについても確認し、あくまでも「総合的」に判断した結果である、と強調する。
しかし、その「総合的な」判断をするために供された材料といえば、「海外への渡航歴」「関西への移動」だけだったことは、博多保健所が板付小に依頼した「健康調査」の実態から明らかとなっている。感染患者と接触したかどうかなど分かるはずもなく、総合的に判断するための要素として残るのは「勘」ということか・・・。
いずれにしても、発熱による欠席児童が、5人いても10人いても、海外渡航歴や関西方面への移動がなければ、「新型ではない」と決めつけていたのである。時期的に考えれば、極めて非論理的な結論の出し方だ。それを、「総合的」という曖昧な言葉でごまかそうとする姑息さには、怒りを禁じ得ない。市民の命より自分たちの保身の方が大事なのだろう。
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