6.そのほかの風土病について
ニジェールには前回紹介したマラリア以外にも、さまざまな風土病がある。
<アメーバ赤痢>
よく隊員がかかる病気の一つである。ニジェールでは米にソースをかけた一般食が露店で売られており、隊員もよく利用する。はじめのうちは慣れないので手を出さないのだが、半年以上もいると胃も現地の食生活に慣れ、値段も日本円で高くても50円ぐらいなのでよく利用する。作りたてを食べれば問題ないのだが、何時間も40度にもなる炎天下に放置されているものを食べると、当然お腹を下す確率が上がる。
症状は腹痛から始まる。はじめのうちはただの食中毒だと思っていると一日たっても治らない。高熱が続き、ゼリー状の便が出るとアメーバ赤痢である。適切な処置を受ければ治るので死亡の危険性は低いが、注意したい。途上国を旅行するとき、露店で食事を済ませる機会は多い。ほかにもランブル鞭毛虫など食事からの起きる病気は多く、十分気をつけたい。
<ギニアウォーム>
浄化されていない水の中に寄生虫が潜んでいて、それを飲むとかかる。よく遊牧民が、水溜りの水を飲んでしまい、その水のなかに卵が潜んでいる。体内に入り成長すると、体長は最大1メートル近くになる。『ギョウチュウ』のようなものである。その頃になると発熱や激痛が続く。そして、成長すると水中で卵を産むために、人体の下部、特に脚部へ移動し、皮膚を食い破って水中へ飛び出す。
実際にその現場を見たことはないのだが、ギニアウォーム対策であちこちを回っていたという仲間が、遊牧民の少女からギニアウォームが出てくる現場を見た話を聞いたが、少女は泣き叫ぶなどの、かなりの惨状だったそうだ。途上国の生水は要注意である。
<ポリオ>
『小児麻痺』と呼ばれている。これは口から感染する病気である。手で汚いものを触り、そこに細菌がいるまま手を洗わずに食事をしてしまうとかかってしまう。熱が続いて、麻痺に似た症状が出る。
WHO(世界保健機構)はポリオの根絶に力を入れており、ニジェールでもポリオワクチンの一斉投与週間がある。ニジェールではほぼ撲滅できているが、国境を接するナイジェリアから運ばれてくることが多く、たまに患者が出る。成人がかかることはまれで、しかもインドやパキスタン、アフガニスタンと上記のナイジェリアだけしか常在していない。
このようにみていくと、途上国には危険な病気は多い。しかし、手洗いを徹底する、腐っていそうなものは食べない、などほんのちょっとの意識と注意で防げるものばかりだ。途上国に旅行に出かける際は気をつけていただきたい。
【廣瀬】
※記事へのご意見はこちら