<政治の変化を待たず、地方から日本を元気に>
―山﨑さんは今後どうなされるんですか?シンクタンクだけで留まられるんですか?
山﨑 いや、事業もやっています。日本の政治が変わるのを待っていられませんからね。私たちの力で、太陽経済を世界に実現するための事業です。
先週は中国で太陽経済研究会を作りましたし、今度はインドやアメリカにも作りたいと思っています。日本の技術、世界の技術を使って、世界のエネルギーと食糧と水の問題を我々の手で解決しようと、取り組んでいるのです。
―坂本龍馬が政界に口出さないでやろうとしていたように、山﨑さんも政治に辟易して自分で動こう、ということですか。
山﨑 辟易したということではありません。私は7年前に、高速道路はタダにできると提言しました。今、これは実現に向けて政治が動いています。10年計画でやっていけばいいと思っています。
しかし、太陽経済は10年計画では間に合いません。チャンスは2年限定です。この2年で、世界でのエネルギーの位置取りや趨勢が決まる。だから、こういう事業を国内外で進めていきたいと思っています。
―ここまで言われていますから、流れは決まってきますよね。
山﨑 今年の後半にアメリカが新政策を出します。石油マン・ブッシュの時代は一番遅れていたのに、いきなり先頭を切って、ITの時と同じように、産業の支配権、覇権を取ろうとしています。日本は、彼らがやろうとしていることに対してどう先回りして、中国、インド、時にアメリカまでも取り込んでいくかということを考えなければいけない。日本が勝つために、今、政治家がすぐにでも考えければならないことです。
―アメリカは、目標を設定して本当に走り出したら怖いですからね。
山﨑 それも、秘密にしているわけではありません。オバマは選挙戦のときからはっきり言っています。
今度のエネルギー庁の長官には、石油廃止論者でノーベル賞学者のスティーブン・チューを据えました。スティーブン・チューはすでにすべて発表してますよね。石油エネルギーから太陽光や風力や地熱を利用したエネルギーに切り替えて、既存の電力体系をすべて超伝導に変えていく、と。それを『グリーン・ニューディール』と言っています。「ここを攻めます」ということがはっきり書いてあるわけですから、せめて我々も身構えて、これからどうするかを考えなければならないと思
います。
そういう新しい経済の波にうまく乗るか乗らないかで、日本という国が経済大国として居続けられるか、そうじゃなくなるのかが決まります。
今の日本は食糧やエネルギーを輸入できるから生きていられますが、そのための外貨を稼げなかったら、戦前と同じような経済になってしまって、日本国民は今の半分ぐらいしか生きていけなくなるから大変です。
―そこに注意喚起してもなかなか響きませんよね。ただ、地方はそれがわかり始めてる気がするんですが。
山﨑 理屈はどうあれ、「このままじゃダメなんじゃないか」「変えていかなきゃいけない」という、日本人の健全な常識や感度があると思います。
ただ問題は、それをすくい上げてひとつのかたちにまとめ上げる「政治の意志」が働くかどうかです。戦後80年代まではよく機能してきたアメリカ一辺倒、東京一極集中型のこの国の形から脱却することです。
―地方から元気にすることを実践されていると伺っていますが、具体的にはどのようなことでしょうか。
山﨑 実は、福岡に「ジャパンエコセンサー株式会社」という会社を作りました。発明一筋20年という、55歳になる九州大学の大学院生が発明したもので、これは本当に大変な大発明です。太陽光発電だろうが電気自動車だろうが超伝導だろうが、電気は交流から直流に変わります。しかし、今までそれを正確に測定できるセンサーがありませんでした。
ジャパンエコセンサーは直流センサー技術を扱う会社ですが、最近特許も取得できました。
今の電池はキャパシティの半分しか使われていませんが、それを正確に測ることができれば、
電池は半分のサイズで済みます。これから計り知れない需要が出てくると思います。
日本にはそのような宝みたいな発明が他にもいっぱいあります。これからそれをもっと掘り起こさなければならないと思っています。東京にしかないと思う、その常識も捨てなければいけません。難しいことですけれども、それをやれればみんなが元気になれるのです。
【文・構成:烏丸 哲人】
山﨑養世(やまざき・やすよ)氏
1958年生まれ。福岡市出身。東京大学経済学部卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)取得。大和証券を経て、ゴールドマン・サックス投信社長として同社を外資系トップの投信会社に育てる。ゴールドマン・サックス本社パートナー(共同経営者)等を歴任。02年、同社を辞し、シンクタンク 養世事務所を設立。金融・財政・国際経済問題等の調査・研究、政策提言を行なう。「高速道路無料化」を02年から提唱している。著書に『次のグローバル・バブルが始まった!』『日本「復活」のシナリオ~「太陽経済」を主導せよ!』(ともに朝日新聞出版)ほか。
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