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特別取材

アウトレットがもたらした功罪(4) 消費不況のなかで、その行方は
特別取材
2009年7月 2日 08:43

4. 揺らぎ始めたアウトレットの優位性 

 なぜアウトレットの解釈がこうも曖昧になってきたのか。1つは日本のディスカウント市場の成熟化がある。日本人は欧米人と違い、老若男女、高・低所得者に限らず、ブランド品を購入する。長期化した平成不況、さらに景気後退による収入減で、少しでもブランド品を安く買いたいとの消費者心理を背景に、アウトレットは日本市場に浸透した。
 ところが、アウトレットが認知された現在、消費者はアウトレットをショッピングセンター(SC)と同じような購買チャンネルでとらえ始めている。だから、暇つぶしに外出しても目的買いでなければ、SCと同じように何も買わずに帰っていく。巷にはユニクロなど低価格業態がいくらもあり、「安売りセール」も盛んだ。もはや価格訴求のアウトレットと、こうした業態との差がなくなってきたのだ。そこでデベロッパーは必死に有力ブランド店を集め、テナントは専用品まで作って、お客の財布の紐を緩めようとする。
 しかし、いくら安くてもお客は価格以上の価値がなければ、商品を購入することはない。安さに慣れてしまった日本市場で、30~70%オフなどの表示は何のインパクトもないのだ。価格メリットでは、もはやアウトレットの優位性はないと言えるだろう。

◎商品の絞り込みと生産抑制で在庫減

 2つめはメーカー側の生産調整がある。ブランドメーカー、特に日本のアパレルはここ数年、売り上げが大きく落ち込んでいるため、企画生産する商品を絞り込み、数量も抑制する傾向にある。そのため、売れ筋商品は利益率の高いレギュラー売場で販売したいと考え、プロパー(正価)のうちに店間移動も積極化させるなど、消化に全力を注ぐ。これがアウトレットに商品を流通させにくくしているのだ。
 元来、アパレル各社は小売価格と販売チャンネルの支配に血道を上げてきた。それが正価消化率のアップによる在庫減らしと、生産計画の調整という戦略だ。しかし、いくら消化率アップに努めても「売れないものは売れない」。それがアウトレット出店に走らせたわけだが、アパレルもこれまでの苦い経験から十分に学習し、生産計画の高度化を実現している。
 GMに代表される米国メーカーは、大量生産を王道としてきた。だから、アウトレットも必要になる。しかし、日本メーカーのトヨタは「カンバン方式」を生み出し、計画生産を導入した。米国が『どんどん生産』なら、日本は『必要なもの生産』。それが両国のDNAなのだ。やはり、大量生産は日本にはなじまないということである。

(つづく)

【剱 英雄】

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