6. 優劣が出始めたデベロッパー
最後に、デベロッパーの運営力にも優劣が出始めている。本来、アウトレットとは究極のブランドビジネスであり、アウトレットモールとは高級ブランド店や人気ショップのアウトレットを集積したもので、これが成功する絶対条件である。
たとえば、アルマーニやドルチェ&ガッバーナのような高額インポートで、ブランド・ロイヤルティーが確立しているもの。そして、従来の日本の専門店にはないカテゴリーや商品を大型店舗で展開している、ナイキやアディダスのような外資系企業だ。
これらの外資系テナントを誘致できなければ、集客の点では厳しいと言わざるを得ない。その点でチェルシーのような外資系デベロッパーは及第点だが、三井不動産はナイキなどのスポーツブランドは押さえているが、あとは日本ブランドの集積で魅力に欠ける。
地元九州では、セキアヒルズのアウトレットモールは集客力の低さで失敗に終わった。マリノアシティ福岡もその特徴がイマイチわかりづらい。キャナルシティ博多の増床計画がとん挫したことも含め、デベロッパーのテナント誘致には疑問符が付く。最近「マリノアシティ=アウトレット」というCMを流しているが、それは消費者に対する魅力が薄れている証拠で、同社のアウトレット運営の苦戦ぶりを如実に表している。
◎競争激化、運営力不足でも開発する理由
全国的に見ても、初期に開発された施設は敷地面積が狭く、空き店舗が出始めている。生き残り競争に立たされているなかで、デベロッパーには改めて増床やテナント誘致、販促などの運営力が試されているということだ。
当然、国内外問わずブランドメーカーや小売業は、今後は集客力や運営力のあるところと組む、と出店に慎重になっている。とすれば、デベロッパーはいかに集客や売り上げ拡大にしのぎを削れるかが課題になる。
しかし、それを解決しないまま、チェルシーや三井不動産が開発を進めるのはなぜか。それはアウトレットのような施設開発が、デベロッパーにとって効率がよい物件だからだ。
施設を開発し、土地と建物の総コストに利回りを計算して、保証金と敷金の総額を計算、それを区画ごとに案分し、まずイニシャルコストの回収にメドを付ける。ランニングコストは、家賃として最低保証と歩率などを区画と業種に案分するから、絶対に損をすることはない。
だから、テナントの採算には関係なくアウトレットの運営が可能になるため、器をつくりテナントさえ集めれば、もう安心という意識になる。そして、「イオンがSCなら、ウチはアウトレットでいこう」という程度の感覚でしかないのである。
【剱 英雄】
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