橋下大阪府知事や東国原宮崎県知事が、「地方分権」を叫んで政党と渡り合っている。中央から地方へさまざまな権限を委譲し、地域のことは地域で決めるという「地方自治」本来の姿を実現しようとするものである。多くの人が共感する考え方ではあるが、果たして実現は可能なのだろうか。
地方分権が進んだ場合、その受け皿となるのは都道府県、市町村などの自治体である。立派にその役割を果たしている自治体もあるが、「これで受け皿になれるのか」と考え込まされるような自治体の事例は少なくない。
税金の無駄使いは国だけの問題ではなく、じつは身近な自治体でこそ多発しているのである。近く詳細を報じる予定だが、地方自治体の首長や職員らの出張命令書や添付書類などを確認すると、驚くべき実態が浮かび上がる。もちろん、ハコモノを筆頭とした無駄な公共事業の事例は後を絶たない。地方議員の数や質についても同様で、我々の税金で生計を立てている人間たちの無能さが、どれだけこの国から活力を奪っていることだろう。
地方自治の確立には、権限委譲や住民参加が必須である。しかし、受け皿である地方自治体や議会の質を高めなければ、実質的な成功は期待できない。地方分権の実現を願う橋下知事の気持ちは十分に理解できるが、政治上の取引材料にするべきではない。
首長らに課せられているのは、それぞれの地域における住民意識の醸成と、「安心できる」行政組織を作り上げることである。地方分権は政党が実現するものではなく、地域の手で勝ち取るものではないだろうか。
【頭山 隆】
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