一時のブームは下火になったものの、底堅い人気の豚骨ラーメン。大小さまざまな企業が勢力拡大にしのぎを削るなか、店舗体制の見直しとブランド再構築を目指すのが「味千ラーメン」こと、重光産業(株)である。
現在、国内106店舗、海外387店舗を展開するが、年商は16億8,600万円(2008年6月期)。業績規模はそれほど大きくない。
理由は海外事業が食材供給とロイヤルティー収入に限られること。そして何より、国内事業の伸び悩みがある。ブランド再構築に手を付けたのは、国内での売り上げを再拡大させるためである。
FCテコ入れと直営展開でブランド再構築を推進
1968年にラーメン店を創業し、生麺やスープなどの製造部門が72年から正式に株式会社となった同社にとって、成長の原動力はフランチャイズシステム(FC)によるチェーン拡大に他ならない。当初は加盟店に対する厳格な規程はなかったが、それでも看板と食材の提供のみで、十分に成長軌道に乗ることができた。
ところが、外食産業が成熟化するなか、店舗の老朽化や経営者の高齢化で、売り上げも次第に鈍化。そこで、同社は2000年にFC契約の内容を大幅に見直し、契約更新しない加盟店のリストラを断行した。
以降、新規加盟店には本部からさまざまなノウハウが提供され、経営指導がなされているが、それ以前に加盟した店舗には規程の適用はない。そのため、競争が激化する現在、好調なところ、そうでないところと、店舗間で売り上げ格差が生じているのもたしかだ。
08年度の売り上げは対前年比こそマイナスではないが、店舗によっては10%以上減少しているところもある。店舗体制の見直しは待ったなしというわけだ。
「FC契約の改定で、契約更新しないお店を4割程度削減し、契約は7年ごとの自動更新にした。古くからのお店はご夫婦で経営されているところが多く、生活できればいいくらいの感覚。借金してまでのリニューアルには積極的ではない。思い切ったリストラはできないが徐々に再編し、直営店を積極的に展開することで、味千ラーメンのリ・ブランド化を進めていく」と重光克昭社長。
現在の味千ラーメンがあるのは、創業当時から、ともに歩んできたFC店のおかげとの思いも強い。だから、ドラスティックなFC再編より、既存加盟店へのテコ入れと、3カ年で直営9店舗出店という両輪でブランド再構築を進め、売り上げ拡大のきっかけをつかむ考えのようだ。
【剱 英雄】
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