総選挙に向けて各党のマニフェストの内容が出そろった。「地方分権」も重要なテーマとなるが、権力の委譲を受ける地方自治体は本当にその能力を培っているのだろうか。
福岡、北九州両政令市を含む福岡県内28市について調べたところ、全ての市が公費出張の精算に宿泊費の領収書添付を義務付けていないことが判明した。いわゆる「投げ渡し」であり、民間企業では考えられないことだ。自治体の旅費規程は杜撰というほかない。
一般的には、出張旅費が職員に渡った時点ではあくまでも「仮払い」であり、その後、ホテルなどの宿泊施設側が発行した領収書が揃った時点で「精算」となる。しかし、各自治体にはそうした精算システム自体が存在しておらず、職員の受け取り書が「領収書」なのだ。
市民オンブズマン福岡の児島研二代表幹事はこうした現状について次のように話す。
「10年以上前から、(役所の)裏金が問題になってきました。市民の税金を預かっているという基本的姿勢が欠如しているのです。住民のために有効に使うべき税金である以上、何に使ったのかという説明がつかなければなりません。しかし、領収書なしでは説明責任を果たせない。まだそんなことをやっているのかという感じですね」
取材に対し、多くの自治体が「規程に従って」と前置きする。しかし、その規程(旅費規程)はほかでもない、それぞれの自治体が決めたもので、国に押し付けられたわけではない。言うならば、手前勝手な規程なのだ。
多くの民間企業では、出張旅費を精算する際、領収書なしでは受け付けてもらえない。宿泊したのかどうかの証明ができないものに、金を払う会社などないだろう。自治体の旅費規程は、民間では全く通用しないものなのだ。
公金を使いながら領収書添付を義務付けない自治体の姿勢を見ると、無条件での「地方分権」には疑問を感じてしまう。
つづく
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