地域の活性化には広い視野が必要
特色を活かした地域の発展に貢献する
福岡県南部の多くの中小企業が戦後復興資金の調達に苦労し資金繰りの厳しいなかで、県南部の商工会議所等を中心に設立された経緯をもつ(株)筑邦銀行。今年度より頭取に就任された佐藤清一郎氏は、長くメガバンクのヨーロッパエリアの責任者を務めた実績をもつ。その広い視野をもった同氏に、今後の地方銀行としてのあり方や抱負などをうかがった。
所在地:福岡県久留米市諏訪野町2456-1
設 立:1952年12月
資本金:80億円
<営者としての資質とは>
―九州・山口の地方銀行の決算内容を見まわしてみると、一部の銀行を除いて厳しい状況が続いているようですが、いかがでしょうか。
佐藤 そうですね、正直なところ他行さんのことよりも、自分のところをどうしていくかで頭が一杯ですね。たしかに、バンクアナリストの方々のお話をうかがっていると、しっかりと経営されている銀行さんもあるようですが。
―一昔前であれば、頭取に就任すると上から「あれやれ、これやれ」という方々もいらっしゃったでしょう?
佐藤 昔はそれでよかったのでしょう。しかし、今の時代は頭取であれ、中小企業の社長さんと同じように陣頭指揮を執って、お客さまと直に会わなければならない状況だと思います。たまたま自分はずっと現場を歩いてきた人間ですから、“そこ”が一番大切だということは、よく分かっているつもりです。
海外では責任者を務めましたが、『トップダウン』の傾向が強く、すべてトップに聞いてきます。1995年、イギリスのベアリング銀行が、シンガポール支店で巨額の損失を出して破綻したのですが、当時のトップが「私はその内容を知らなかった」と弁明しました。これは、(1)嘘をついて知らないふりをした、(2)本当に知らなかった、という二つの解釈ができますが、(1)だとすれば、そのトップは不誠実であり、こういう人物は金融界にいてはいけません。また、(2)の場合ですと、経営者として無能というわけです。要は末端で何が起こっているのか、まったく把握できていないことを示しているわけですからね。その後、イギリスの金融界では、こういった経営者を排除する決まりができたわけです。日本にはありませんが、「アプルーブドパーソン」という概念で、当局が認めないと金融機関の経営をしてはならない、当局が銀行や保険会社の取締役を罷免できる権利なのです。経営者として、組織内にどういうリスクがあるのか、それを事前に把握して対処法を考えていなければいけない。一社員が巨額の損失を出した場合、当然リスク管理不足として責められる。だから大変ですよ、トップは。
【文・構成:八戸 智幸】
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