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特別取材

企業格付け制度の変遷(1)
特別取材
2009年8月 6日 09:22

 平成8年から平成9年にかけての金融危機を打開するため、平成10年6月に発足した金融監督庁(現在は金融庁)は、金融機関の不良債権の処理を厳格に進めるために企業格付け制度を導入した。それまでは各金融機関がMOF検を受けるつど、検査官と折衝して引当額を決めていた。いわゆる大蔵省との馴れ合いのもとに決算書類を作っており、飴と鞭を使い分ける大蔵省の影響力は絶大で、金融機関の生殺与奪権を握っていた。特に体力の弱い金融機関や不祥事が発生した金融機関に対しては、厳しい検査を実施した後に人材を送り込む、いわゆる「天下り」が常態化する温床となった。

 当初は体力のある都銀からスタートして、地銀、第二地銀、信用金庫、信用組合と格付け制度を導入したのだが、体力のある金融機関は厳格な引当が可能でも、そうではない場合は引当をすることで債務超過になり破綻する恐れが出る。中小企業に対する貸し渋りや貸し剥がしにより地域経済が崩壊する可能性が生じるのである。
 そのためAという企業に対して、体力のある都銀・地銀の債務者区分は破綻懸念先、体力の弱い都銀・地銀の債務者区分は要管理先もしくは要注意先、第二地銀以下は要注意先とするなど一物二価を認めた。つまりは金融機関の体力に応じた債務者区分である。それは金融機関を破綻させないための苦肉の策でもあったが、ダブルスタンダードやトリプルスタンダードの債務者区分であり、グローバルスタンダードには程遠い状況にあった。

(つづく)

【北山 譲】

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