「政権交代」そのものが大きな争点となっている今度の総選挙。「安心社会」をめざす自民党と、「生活第一」を掲げる民主党のマニフェストを比較してみたが、肝心なものが欠けているとしか思えない。
先月31日に公表された自民党のマニフェストは、細かな点で民主党に対抗する政策を並べたものの、攻勢をかけるどころか守りの姿勢が目立ち、新鮮味に乏しい。
一方、民主党のマニフェストも、2007年参院選の時の内容を踏襲した政策のオンパレードで、国民へのばら撒きという印象は免れない。確かに民主党の政策は、子ども手当てや教育無償化、農家への戸別所得補償、高速道路の無料化など自民党との違いが鮮明になっている。またその財源についても、民主党は4年間消費増税を封印し、徹底して無駄づかいをなくし、予算の組み替えで財源を捻出するとして、自民党の「消費税引き上げ」と一線を画している。
だが、どのような国を創るのかという未来への構想については、民主、自民ともに明確に示せていない。かつて1990年代には、「小さくてもキラリと光る日本」(新党さきがけ)、「普通の国」(小沢一郎)といった新たな国家像が熱っぽく語られていた。また小泉政権では「郵政民営化なくして小さな政府なし」といった、小さな政府や規制緩和路線が示されていた。麻生首相は、31日の記者会見で「行き過ぎた市場原理主義から決別します」と明言したが、その行き着くところは定かではない。民主党の将来ビジョン・国家像も明らかとは言えない。
これまでは自民党内で擬似政権交代が行なわれてきただけで、明確な路線の変更はなかった。政権維持に都合が良いように修正を重ねてきただけだ。今度の総選挙で「政権交代」がメインテーマであるならば、両党とも、目指すべき国家像を国民の前に明示することが必要のはずだが・・・。
武田
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