年収が500~800万円のサラリーマンや公務員をターゲットに、木造低層アパートを建築するビジネスモデルが主力事業である。従来とは異なる層に需要を見いだしたことが、同社の飛躍につながったといえるだろう。ただし、新たなモデルは従来よりも大きなリスクを孕んでいる。
まず一般論として、不動産投資にはリスクがつきものだ。この場合はオーナーにとっての、不動産価格下落、入居率低下、金利上昇などのリスクがあるということである。通常は家賃収入と借入金返済額との差額が利益となり、それを長期にわたって続けていく。入居率が高い水準で推移していけば、安定的に利益を得ることができる。さらに、不動産価格が上昇すれば、最終的には不動産売却益(キャピタルゲイン)を得ることもできる。だが、これらが裏目に出れば、オーナーは損失を抱え込んでしまうことになる。
同社の場合、オーナーの対象が地主でもなく富裕層でもない。必然的に借入に対する依存度が高くなるため、オーナーにとってはハイリスクな不動産投資になる傾向が強い。同社が収支シミュレーションとして掲げているモデルでは、年収500万円の人が自己資金500万円、銀行ローン5,100万円、バックアップローン(同社からの貸付)500万円となっている。実に年収の11倍強の借入をする計算だ。一般的に見れば借入が多過ぎると思われるが、そこはオーナーの自己責任ともいえる。
問題は、経済環境が悪化した場合、オーナーの投資リスクも高まるが、同社のビジネスモデルの課題が浮き彫りになることだ。オーナーの資金調達が簡単にはいかなくなり、ターゲットとしてきた需要が喪失するのである。
【緒方 克美】
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