小泉政権発足(平成13年4月26日)直後の平成13年4月28日、日経平均株価は前年に始まったITバブル崩壊の影響を受けて、7607円88銭とバブル崩壊後の最安値を付けた。
森前内閣の政権運営にイライラを募らせていた国民は、小泉総理の「自民党をぶっ壊す」「構造改革なくして景気回復なし」の明快な言葉に感動し高い支持を与えたものの、デフレが進行し中小零細企業の倒産が急増、失業率も5%に達した。これに追い打ちをかけるようにアメリカ同時多発テロ(平成13年9月11日)が発生する。
平成14年9月、小泉首相は金融危機からの脱却を図るため、当時の柳沢伯夫金融担当相を更迭し、民間から平中平蔵氏を起用。金融機関の不良債権処理にあたらせた。
竹中氏は、同年10月に金融再生プログラム、11月に工程表を発表している。その内容は
(1)平成15年3月までに金融機関の不良債権問題の終結を目指し、引き当てに関するDCF
法の導入等を実施する。特別検査の再実施、自己査定と金融庁検査の格差を公表する。
(2)新たな公的資金制度の導入のため、金融機能強化法の制定を目指す。
(3)自己資本充実(引当金の無税償却制度導入、繰延税金資産の合理性の確認、自己資本
比率への外部監査導入)
(4)金融機関のガバナンス強化(優先株の普通株への転換、健全化計画未達先への業務改善命令、早期是正措置の厳格化、早期警戒制度の活用)
(5)企業再生の枠組み強化
(6)中小企業貸出への配慮
等を骨子とするものであった。この金融再生プログラムを受けて、(1)りそな銀行への資本注入 (2)繰延税金資産に対する監査の厳格化により、債務超過になった足利銀行の一時国有化 (3)経営健全計画を自ら的確に履行しようとしないUFJホールディングスに対する業務改善命令、と矢継ぎ早の金融安定化策が打ち出された。
そのため「TOO BIG to fail」と思われたUFJ銀行が検査忌避をきっかけに東京三菱銀行と合併する羽目になったのは記憶に新しい。この出来事により、金融機関は金融庁の軍門に下ることとなった。
なお、平成16年8月1日に金融機能強化法が施行されて、平成18年に紀陽ホールディングス、豊和銀行に資本注入がなされ、金融庁による金融機関の再編の軸足は、地銀・第二地銀・信用金庫・信用組合等の地域金融機関の救済合併に移って行く。
【北山 譲】
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