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「味千」ブランド再構築で国内事業を巻き返し(5)~重光産業~
特別取材
2009年8月 7日 08:00

再生能力が問われる「美少年酒造」への支援

 重光産業として記憶に新しいのが、「美少年酒造(株)」への支援だ。三笠フーズ(株)の事故米転売や裏金受領発覚をきっかけに民事再生法を申請した酒造メーカーを、地場企業として何とかしたいとの大英断だった。
 申請前の美少年酒造は、熊本県の酒造卸組合において、そのシェアは55%。特に「美少年」の大吟醸などは関東で人気が高く、トップ企業のリタイアは、地場酒造業にとっても大きな痛手となった。ただ、事件についてメディアの報道が不十分で、誤解を生じた面もある。それは三等米が使われたのは紙パック入りの『経済酒』といわれる銘柄で、瓶詰めのブランド酒には一切使われていないこと。しかも、経済酒には使用する米の等級は指定されておらず、一等米から三等米まで、すべて認められた範囲内であることだ。
 「美少年酒造は一等米から三等米への変更に、意図的に関わったのではなく、三等米変更の差額分をバックリベートとして受け取っていた。三笠フーズは、この三等米に事故米を代用していたのである。原材料の品質管理ができていなかったのは、真摯に反省しなければならない。でも、三笠フーズが三等米に事故米を使っていたことを、農水省が見逃した点にも問題がある」と重光社長は憤る。
 これらが事件の真相で、報道では肝心な部分がやや欠落していた。だから、酒販卸や小売店、消費者には美少年酒造が原料米を意図的に事故米に変え、なおかつ三笠フーズからリベートも受け取っていた、と勘違いされて伝わったようである。
 ともあれ、崩れ落ちたブランド、揺らいだ信頼を回復するのは難しい。倉庫には各社から返品された在庫がうず高く積まれ、製造ラインは今年の仕込みまで休眠状態が続く。一時は13億円あった売り上げも、9月の時点で4億円にまで下降。8月には50名の従業員のうち、24名が解雇を余儀なくされる。

海外店舗を新たな販路に、品質保証が立て直しのカギ

 もっとも、ブランド酒の美少年は、熊本の清らかな水によって生み出される九州屈指の銘酒。原料米は間違いなくJAお墨付きの一等米で、その味や品質には一点の曇りもない。もし、ファンが美少年という銘柄を望めば、小売店も仕入れなければならないし、酒販卸も商品を供給せざるを得ない。販路の回復は難しいが、一筋の望みがあるとすれば、それはファン次第ということになる。
 「目下の懸案は、秋までに在庫をどうするか。酒販卸を中心に、営業マンがおわびに回っているが、取り引き再開までには至っていない。味や品質では決して負けないので、応援しようというお客さんが現れるのを待ち望んでいる。ただ、ブランドは残しても、社名は変えなければと思う」と重光社長は苦渋する。
 海外事業は、業態が居酒屋に近いだけに期待はあるようだ。現に、中華料理では紹興酒などの料理酒が使われ、食前酒としても飲まれている。寿司や刺身などの日本食ブームに沸いているのも追い風だ。
 「日本が戦後豊かになるなかで、ブランデーやワインを飲むようになったのと同じで、成長著しい中国でも日本酒に興味が出てくるのでは、と思う。日本食の浸透とともに、酒も出してみたい」(重光社長)と海外店舗を新たな販路として考える。
 ただ、事件の発端には品質管理の問題があっただけに、まずはその保証を成し遂げなければならない。海外といっても、インターネットによって、いつ「事件」が再燃するとも限らないからだ。もちろん、新たな販路の開拓など、国内での取り組みも猶予はない。
 支援には同社を含め4社であたっているが、7月3日の臨時株主総会、取締役会を経て、重光社長が代表取締役に就任した。美少年酒造の再建は、まさに重光社長の手腕にかかっている。

【剱 英雄】

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