平成17年以降、BRICsの台頭やアメリカ経済の好調に支えられて、日本経済も大手を中心に業績の回復が顕著となり、金融機関は不良債権の処理を加速していった。
つまり日本版のグローバルスタンダードを確立するため、債務者区分を厳格に適用し引き当てを強化してきた。裏を返せば日本の中小企業の6割以上が赤字企業であり、要注意先もしくは破綻懸念先、実質破綻先に格付けされていることになる。金融庁は金融危機の再来を恐れて、内容の悪い金融機関には毎年金融検査を実施し、改善が見られない場合には、救済合併を指導してきた。
昨年9月のリーマンショック以降、大手を含む企業業績の悪化により、金融機関の引き当てが急増する見通しとなり、最近金融庁は企業格付けにおける債務者区分の厳格な適用から一転して、破綻懸念先・要注意先の基準緩和に乗り出している。100年に一度の経済危機に見舞われた緊急避難的な側面もあるが、金融庁の基準緩和に戸惑っている金融機関も多いと見られている。
しかしながら借り手側からすれば、破綻懸念先から要注意先になったからといって融資を増やしてくれる訳ではない。つまり金融機関に「引当金の積み増しをしなくてよいとのお墨付き」を与えただけであって、資金繰りに苦しむ中小企業にとってのメリットは何もない。今はただ景気の回復に期待する以外に道はないと思われる。
【北山 譲】
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