銀行とは違う役割を担う信用金庫
地元中小企業を最後まで支援する守護者
<異常な状況は夏以降も継続の見通し>
―先ほど倒産件数のお話が出ましたが、今期の第二四半期以降の倒産動向をどう予想されていますか。
谷石 まず4月~6月の第一四半期ですが、特異な状況が続いておりまして、たとえて言えば『突然死』のような、正常な状態からいきなり倒産に陥るような事態が増えました。通常、段階を踏んで倒産に至るものなのですが。年末、年度末で手当て融資を行なったにも関わらず、4月~6月に入って異常なかたちで倒産が出てくるようになったのが実感ですね。したがって、「第二四半期に入って、一体どうなるの?」という重大な懸念を抱いております。金融機関の決算は一旦3月末に締めますが、5月中旬あたりに行なわれる監査までは4月以降の後発事象を含みますので、前の期として処理することがあります。今回、その『突然死』が散発しましたので、非常に危機感を強めました。今期に計上できるのであれば、これからの1年間に対処のしようもあるのですが…。
そんなこともあり、第二四半期は楽観視しておりません。この不況は今夏のボーナスなど一般市民にも大きな影響が出ます。すでに収入が減っている世帯も増えていると思いますが、たとえば住宅ローン返済の滞りなども増加してくると予想されます。それにともない、個人ローンの返済条件見直し案件も増えてきます。そのような個人を含め、中小企業も資産の取り崩しをせざるを得ない状況となっていくでしょう。予断を許さない状況は、第一四半期から続くと予想しています。
―福岡ひびき信用金庫は、九州トップの資金量を誇る信用金庫ですが、これからのスタンスについてお聞かせください。
谷石 現在、九州には29の信用金庫があり、九州北部に14信金、南部に15信金あります。この業界は、ある一定の規模がないと、顧客が望むような金融業務ができないと考えています。したがって、合併するのがいいというわけではありませんが、やはり一定の規模を有していないと、地域支援として与えられる影響は出ないのではないかと思います。現在、私どもが約6,000億円の資金量を保有していますが、約10年後の18年にはこれを1兆円の大台に乗せようとの目標で動いています。そういった部分での存在感を示さなくては、信用金庫は生き残っていけないと考えています。年に2回、九州全域の信用金庫の会議が行なわれていますが、銀行とは違い、それぞれで基盤とする地域が異なっていますし、連帯やつながりもある信用金庫ならではの集まりです。そこでは、いろいろな情報交換やフランクな意見交換ができ、それが銀行にはない信用金庫の一つの強みだと思います。
―地元信用金庫など9つが合併してできた福岡ひびき信用金庫ですが、それぞれ風土も違い、いろいろとご苦労されたかと思います。
谷石 数度にわたって合併した信用金庫ですので、現在のかたちは03年10月よりスタートしました。当時、5つの信金が同時合併したことは全国でも稀有でしたが、それ以前の01年の段階で「福岡ひびき信用金庫」として稼動していましたので、2年間の準備期間もありましたし、合併のタイミングや組む相手にも恵まれました。なによりも、「北九州周辺の地元をよくしたい」という各信金の強い想いがあったからこそ、現在の姿があるのだと思います。
私も現場上がりの人間で、当時は理事長(現古川会長)を支える立場で合併に携わり、その様子を見てきましたが、よくある強引な合併ではありませんでした。名づけるのであれば、『熟し柿作戦』とでも申しましょうか。熟した柿を崩さないようにうまくすくい上げた。たとえるのであれば、そんな合併でした。重複した店舗や役員に関してはある程度の整理は行ないましたが、それ以外の従業員は一切手を付けずに新体制を構築できました。これが合併成功の大きな要因だったと思います。
5信金合併より6年目に入りましたが、合併当初の目標であった「資金量6,000億円、従業員600人、拠点60店舗」はほぼ達成しています。また、さまざまな効率化も進めており、拠点に関しては最終的に45店舗あたりまで統合していく予定です。
【文・構成:八戸 智幸】
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