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(株)幻冬舎 代表取締役社長 見城 徹 氏 「熱狂」(4)
特別取材
2009年8月14日 08:00

幻想を持つな、企画モノに頼るな、コンセプトで売れ。
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 見城 いよいよどうしようか…というときに、雑誌はコンセプトで売らなきゃダメなんだという原点に思い至ったわけ。しかも、半分は小説を載せなきゃいけないという宿命もある。じゃあ「僕がずっと続けられるコンセプトは何だろう」と考えた。もちろん小説は続けなければならない。そういうなかで、僕は坂本龍一とか松任谷由実とか浜田省吾とか井上陽水とか、ミュージシャンとすごく親しくやってきたよなぁ、と考えてるうちに、ミュージシャンの内面だったら、小説とシンクロするんじゃないか、と。今は「スピリチュアル・メッセージ」って普通に使われるけど、「スピリチュアル・メッセージ」っていう言葉は僕が作ったんだ。「スピリチュアル・メッセージ」=ミュージシャンの内面を毎号特集して、そのミュージシャンを表紙にする。ミュージシャン自身に全曲解説や全ステージ解説をやってもらったり、そのミュージシャンにまつわる、個性をちゃんと引き出す特集も考えた。
 それをやり始めたら、販売部数は倍々ゲームになっていった。1万が2万になり、2万が4万、4万が6万、6万が8万…尾崎豊を特集した号では9万部が完売したんだ。
 尾崎豊がある時期から全く活動していなくて―その何年か前に、僕は尾崎と『誰かのクラクション』っていう画期的な本を作って、30万部以上のベストセラーになったんだけど―彼が事務所もレコード会社も失っていたときに、僕は、自分で金を集め、不動産屋をまわり、人を集めて、彼が社長の「アイソトープ」という事務所を作ったわけ。会社には内緒でね。それで、まだ活動を再開してもいない尾崎の特集をやったんだよ。

 ―『沈黙の行方』ですね?

 見城 そう。これが9万部を完売して、そこからまたグングンと伸び始めた。最後は、わずか6,000部だったのが実売で約18万部まで行った。30倍に増えたんだよ。当時の出版界、雑誌界の奇蹟だって言われたけれども、そういう経験が自分のなかにあるわけ。そりゃあもう、気が狂ってましたよ。6,000部を30倍にするってのは、やっぱり気が狂わなければできない。
 『GINGER』や『GOETHE』でも同じでね。とにかく『GINGER』に言っているのは、たとえば飯島愛の特集を2号続けてやったんだけど、そういうのも「企画モノ」なんだよ。なくなってしまえば、やがて部数は元に戻ってしまうかもしれない。それから、いわゆるカルチャー的な連載というのも、部数を伸ばす原動力にはならないわけですよ。それは『月刊カドカワ』で言うところの小説と同じなんだ。その当時ものすごく売れていた赤川次郎さんの小説を載せようが、誰を出そうが、部数はそんなに伸びないですよ。まずはコンセプト自体が魅力的じゃないと、雑誌は恒常的に売れていかない。だから、カルチャー的なものにあまり幻想を持つな、企画モノに頼るな、コンセプトで売っていけ、ということを言っているわけ。  
 『GINGER』のターゲットは30歳前後の女性だけど、20歳から40歳ぐらいまでの女性にちゃんとコンセプトとして突き刺されば、もっともっと売れていきますよ。創刊号は22万部刷って70%の仕上がりなので大成功。2号目も68%ぐらいの仕上がりで、目下3号目が今出ているわけだけど…今、言われている通り広告も強烈な不況なので、当初予定したよりも広告が全然入ってない。でもこれをとにかく乗り切らないといけないし、そのためにはやはり、きちっとしたコンセプトをもっともっと創りあげないと。『GINGER』という「生物」、体臭とか血の流れとか心臓の鼓動とか、1ページ1ページが脈を打っている、その生理みたいなものに人が惹き付けられなきゃいけない。だから、その生理を強く持つように、とね。
 たぶん秋以降は広告はも増えてくるはずだし、景気が回復すればもっといいんだけど、そういうところを目指して、今はとにかくコンセプトを固める作業をやっているところです。

~つづく~

【取材・文・構成:烏丸 哲人】


見城 徹 (けんじょう・とおる) 氏

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1950年12月29日、静岡県清水市(現・静岡市清水区)生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、75年に株式会社角川書店入社。『野性時代』副編集長を経て、85年に『月刊カドカワ』編集長。直木賞作品5本を含め、数多くのベストセラー作品を送り出す。93年、同社取締役編集部長を最後に退社。同年11月13日、株式会社幻冬舎を設立。『弟』(石原慎太郎)、『大河の一滴』(五木寛之)、『ダディ』(郷ひろみ)などのミリオンセラー作品を自ら担当編集者として手がけ、経営者でありながら、今なお編集・宣伝・営業の第一線に立つ。とくにその斬新な広告やプロモーションは、業界の常識を変えたと評される。一方、映画やテレビドラマの企画・プロデューサーとしても活躍、その動向は各界の注目を浴びている。


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