総選挙の公示まであと1日、選挙は事実上終盤戦を迎えている。テレビや新聞などは「マニフェスト」「政権交代」ばかりを喧伝するが、次の政権が本当に国民に開かれたものになるかどうかを占う重大な問題には触れられていない。それはメディアとの向き合い方についての問題である。
余り知られていないが、民主党は2002年から記者会見をすべてオープンにしている。さらに、政権についたら政府の記者会見をオープンにすることまで公約にしている。つまり「記者クラブ」に加盟していない報道関係者、雑誌、ネットメディアやフリーのジャーナリストにも政府の記者会見が開放されるということだ。この約束が実現した時の衝撃についてはNET-IB(09年5月18日)で報じているので繰り返さないが、政権交代によってメディアの構造的問題もあぶり出されていくことになる。
現在の記者会見の様子をみればよく分かるが、首相官邸はもちろん、政府の記者会見への出席は「記者クラブ」に加盟している記者に限定され、それ以外は排除されている。民主党の記者会見場は大きなスペースが記者であふれかえっているのに比べ、政府や自民党のそれは余りにも少ない。首相の記者会見にしても、場合によっては「気に食わない」質問をする記者への嫌悪感を露わにし、「番記者」にのみ質問させるということすらある。
記者クラブ制度の問題は、情報を独占的に享受できるという特権的な立場が既得権になっているということだ。そして、それを守るためクラブ加盟の記者が権力を監視するという第一義の任務・役割を果たそうとしなくなる(果たせなくなる)という弊害を生む。
政府や権力者は、メディアをコントロールして都合がいい情報だけを国民に流したがるものだ。民主党も、例外ではないだろう。しかし、同党は「会見フリー」を約束した。自らが公約を破った時、開かれたメディアによって制裁を受ける覚悟の証と言っても過言ではない。
「第4の権力」であるメディアを操縦する自公政権か、それとも国民に開かれたメディアを掲げる民主党か。総選挙のもうひとつの争点なのである。
【武田】
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