7月31日の「内外ニュース福岡懇談会」において、国際未来科学研究所代表の浜田和幸氏による講演会が行なわれた。当サイトでも「オバマ大統領の環境エネルギー政策と日本の技術力」と題して寄稿していただいたが、今回は主に中国の動向と絡めた日米関係の行く末を中心に講演内容を要約した。
<以下、講演内容の要約>
アメリカでは世界を混乱に押しやっている「100年に1度の経済危機」を「金融パールハーバー」と言っています。言い出したのは、世界で2番目の資産家であるウォーレン・バフェット氏。ことほど左様に、何か大きな事件や予想外の出来事が起こると、アメリカでは「新たなパールハーバーだ」と形容する傾向が強いのです。
それでは、なぜ今回の金融危機は発生したのか。よく言われるのが「サブプライムローン問題」です。これはアメリカの低所得者層が、分不相応なローンを金融機関から借り入れたことに原因がありました。政府系ローン公社であるフレディマックやファニーメイなどが、低所得者層向けローンを始めたのはカーター大統領の時で、1977年に「地域再投資法」がきっかけでした。
アメリカの地域経済を活性化するには何が一番有効な手段か。それは地域の人々が持ち家を持つことだ、という見方が根底にありました。家を持てば家具を新調し、車を買い、何より地域に愛着がわくに違いない。そうした融資戦略で、各地の活性化を図ったわけです。そうした背景から、低所得者層向けローンができ、民主党も共和党も経済活性化の切り札として、このローンを後押しするようになりました。
1994年、ビル・クリントン大統領の時に「全米持ち家促進戦略」という、105%ローンを始めました。これは、5%余分にお金を貸すことで、その分を消費促進に使おうという、夢のようなバラマキです。翌年からの10年間で、実に1,250万人もの新規住宅取得者が生まれました。しかし、そのうち49%は頭金ゼロで定収入がない、いわゆる貧困層でした。
こんなローンを組めば、早晩破たんするのは火を見るより明らかです。しかし、2、3年持てば、その間に不動産価格は右肩上がりで高くなる、という不動産神話がありました。返済できない時は売却すれば損は出ないという幻想です。こうして、ローン公社がどんどんお金を貸し付けたわけです。
では、その財源は何か。それは皆さんのお金です。日本は長年にわたってゼロ金利政策を続けていましたが、そのせいで行き場を失った相当額がアメリカに還流しました。それがアメリカ国内の低所得者層の支持をつなぎ止めるための、打ち出の小づち的なサービスの原資となったのです。
【文・構成:大根田康介】
※7月31日の内外ニュース「福岡懇談会」における講演の要約【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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