2004年12月8日、エヌ・ティ・ティ・リース(株)(現NTTファイナンス(株))と全日本空輸(株)で締結された航空機売買契約に基づき、出資金総額8億6,500万円の匿名組合契約書が成立した。
取引銀行担当者の熱心な勧誘もあり、05年7月に業績好調であったS社は、当面の節税効果を図る意味から3,000万円の出資を行ない、この事業に参画した。その他、他社が取り扱う外国航空会社及び船舶購入のレバレッジド・リースに総額1億1,000万円を出資した。
当初は会計上、大幅な減価償却額のメリットもあり、会社本業の利益も十分吸収しても余りある節税効果があった。その後も、本業の収益構造をカバーすると同時に、特別利益計上で本業の赤字をカモフラージュしてきたことは否めない。
しかしながら、昨年のリーマン・ショックに端を発した100年に一度の世界同時不況は、この福岡の地にも津波のごとく押し寄せていることは周知の事実である。S社も例外ではなく、この大波にあっという間に飲み込まれた(従来より財務基盤は脆弱であった)。レバレッジド・リース商品は基本的に、償還期日前の第三者への地位譲渡、または担保提供はできないという約款になっており、換金の道は閉ざされた。
そのような状況下、S社の資金繰りは急速に悪化し、今年1月には取引各銀行に対して借入元本の返済猶予の申し出を行なうに至った。銀行からの資金調達が閉ざされるなか、支払手形の期日は確実に迫っていった。なんとかリース会社に買取を依頼するも、先例がないことと国税当局の承諾が必要の一点ばりであった。
そこで、国税当局との必死の交渉の結果、「私企業間の売買について、当局は関知しない」、「当局が申請書を収受する意味がない」、「税務署の書式にもない」などの言質を取ることができた。
この結果を踏まえ、リース会社と再交渉を行なった結果、2月の支払手形決済日の3日前に2,000万円で地位譲渡契約が締結され資金調達ができた。薄氷の思いであった。
激変する今日の経済環境のなか、あれほど熱心にレバレッジド・リースを勧めた銀行は見返り担保にも応じず、ただ約款を盾に静観するのみであった。
また、1年先すらわからない不透明な時代、10年物の金融商品は期間リスクが大きく、為替相場との連動もあり、専門スタッフもいない。中小・零細企業にとって手を出すような商品ではない。まだ銀行預金のほうが安全・確実に換金が図れる。
目先の利益繰延商品に惑わされず、本業を地道に邁進することが一番の不況対策であることを肝に銘じるべきであろう。
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