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世界不況と日米関係―中国経済の動向を中心に 浜田和幸氏講演録(2)
特別取材
2009年8月18日 08:00

 2002~2009年の間、アメリカは景気もよくなり雇用も増えました。とはいえ、そのうち5分の2は住宅バブルによるもので、アメリカ経済自体がバブルにどっぷり浸かっていたといえるわけです。「すべてのバブルは破裂する」と言いますが、今回も例外ではありませんでした。

 こうした他人のお金に依存する心理状態に飲み込まれていたのは低所得者に限ったことではありません。昨年夏のリーマン・ブラザーズの破たんに始まった金融危機において、大手の金融機関や保険会社が相次いで破たんしましたが、政府の公的資金注入によって救済されています。自らの責任を果たそうとする経営者は皆無に近く、国民からも批判や非難の声が聞かれました。しかし、状況は一向に改善されていません。要は、教育も経験もある人たちまでもが“強欲資本主義”にどっぷりと浸かっているのが今のアメリカなのです。

 モノは作らず、ビジネスモデルの構築によって世界経済を主導するアメリカ式の錬金術。その力はいまだに生きています。アメリカの経済は破たん状態と言われていますが、彼らは転んでもタダでは起きません。金融危機によって生じた損失を取り返すために、すでに新しいビジネスに人も資本もどんどんシフトしています。危機が過ぎるまでじっと待つ日本とは違います。

 現在、アメリカでは3,600万人もの一般の人々が食事をまともにできない状況に陥っています。政府発行のフードスタンプに頼る有様です。つまり、国民の10人に1人は自分の財布から食事代を払えないわけです。失業し家計が破たんした結果です。政府は救済用のスタンプを発行するために、毎年2兆円以上の国家予算を注ぎ込んでいます。これは大変なことです。こうした状況を見ると、アメリカはまだ危機的状況を脱していません。それどころか、一層大きな地震源を抱えているといえるでしょう。

 注目すべきは、サブプライムというのは不動産バブルのほんの一部に過ぎないことです。これからは「オルトA」、オルターナティブという金融用語ですが、プライムとサブプライムの間のローンが破たんする恐れが強く、そうなれば大津波となって世界を飲み込むことになるでしょう。

 2009年末から次年初には「オルトA」破たんが加わり、全体で100兆円もの焦げ付きが出てくると予想されます。そうなると、アメリカのドルや国債が瞬間的に紙クズ同然になる可能性すら否定できません。今や世界最大のドル保有国となった中国は、どうやって担保をとろうかと考えています。

(つづく)

【文・構成:大根田康介】

※7月31日の内外ニュース「福岡懇談会」における講演の要約

【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
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 国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。

 ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
 なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
 テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
 その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
 また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。

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