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経済小説

山水建設への遺書(1) プロローグ/野口孫子 氏
経済小説
2009年8月20日 14:11

プロローグ

 世界的な経済不況の嵐の影響を受けて、山水建設は創業初期の赤字決算以来40数年ぶりに、来年3月期に赤字に転落する見込みだろうと思われる。
 つい1、2年前までは1,000億円前後の経常益を出していた会社である。あの世界のトヨタでも2兆円の黒字から一転して、今年は赤字に転落した。
 まさに、激変の時代である。
 山水建設は創業以来、常に右肩上がりの成長を続けてきた。現経営者は右肩上がりの真っ最中に入社した人間ばかりで、過去の成功体験しか知らないし、全社員が知らないというのが実情だろう。
 初めて経験する赤字、人員整理、早期退職勧奨、経費節減、工場閉鎖等々、後ろ向きの施策ばかりが会社の方針として打ち出されている。
 幹部役員、社員が右往左往しているのがわかる。このようなときにこそ、リーダーである会長や社長、役員幹部の強力なリーダーシップが要求され、必要とされているのである。
 経営者に危機感がなければ、会社は容赦なく市場の競争から取り残され、消え去るしかないのである。
 山水建設の会長と社長は本当の危機感を持っているのか、いささか疑問に感じている。
 口先では、コピーライターが書いたような綺麗ごとを並びたて、社員に叱咤激励しているが、果たして、全社員にその意気込みが伝わっているのか、疑問に思っている。
 会社の理念、事業計画、現状打破の政策に関する指示も綺麗ごとだけだ。そこに魂が入っていなければ、社員はそれを見抜き、聞いたふりをするだけになってしまうのである。
 山水建設の底力を発揮して、必ず栄光を取り戻すことを期待し、あえて個別に問題点、素晴らしい点を挙げながら、危惧や苦言、激励を述べていきたい。

2009年 盛夏
野口 孫子
(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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