(2)中小企業にふさわしい金融手法の提供

　金融機関には、中小企業に対し、そのライフサイクルに応じた適切な経営支援を行うことを通じて借り手の成長・改善を促すことが求められる。こうした観点から、本検査事務年度は、金融業に本来期待される役割ともいうべき情報生産機能を強化することによって、ビジネスマッチングやМ＆Aに関する情報等、企業の付加価値向上に資する多面的な機能・サービスを提供していくための創意工夫を凝らしているか関係先と連携した継続指導等による事業再生に向けた取組が行われているか、等に着目する。さらに、事業再生等に向けた優れた取り組みや創意工夫が認められる場合には、検査において積極的に評価し、金融検査評定にも明確に反映させるとともに、金融検査指摘事例集により広く周知する。

　赤字であっても優れた技術等持っている企業、地域になくてはならない特色を持っている企業に対する適切な経営指導をして、事業再生を図るべきであるとの金融機関の本来の役割を求めている。従来、赤字企業は画一的に、要注意、破綻懸念先、実質破綻先に分類されていたが、そのような企業に対してリスク(融資)をとり、再生させた金融機関に対しては、積極的に評価するとしている。赤字企業であっても特色を持った企業は、金融機関によく説明をすれば新規融資が受けられる望みが出てくる。
今は黒字であってもいつ赤字に転落するかわからない。中小企業の経営者にとって大切なことは、特色のある企業に育てることである。
　一方金融庁も金融機関も画一的な引当率でなく、個々の企業の内容を精査して、引当率を決める等のきめ細やかな工夫が必要と思われる。今こそ「角を矯めて牛を殺すこと」のないような金融行政が切望される。

（了）

【北山 譲】

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