総選挙に関する大手メディアの選挙情勢調査がほぼ出そろった。先週から新聞・テレビで各区の選挙情勢が報じられており、各陣営では一喜一憂がつづく。しかし、現在の選挙情勢調査には問題点もある。全国で「民主党300議席超」との推測だけは一様なのだが、小選挙区の情勢分析になるとかなりの違いがある。数社の調査で10ポイント近く他候補を引き離しているかと思えば、別の社の記事では全く逆の数字に基づき「接戦」になったり「猛追」になったりと忙しい。あまりの違いに首をかしげる候補者陣営も・・・。なぜこうしたばらつきが生じるのだろう。
まず考えられるのは、調査対象の数の違いである。調査に当たってのサンプル数は各社まちまちで、選挙区ごとに1,000サンプルのところもあれば300、あるいは500とバラバラの状態。100サンプル程度で情勢を分析してしまういい加減なものも少なくない。サンプルが多いほど精度が高くなるのは当然なのだが、調査にかかる費用も調査対象人数に応じてアップしていくのだという。報道に接する有権者は、そうしたメディア側のお家事情など知る由もない。
次にあげられるのは、調査方法の問題である。対面調査で数百から1,000単位の調査をすることは難しく、大半の調査方法は電話によるものが一般的となっている。その場合、ほとんどが「固定電話」にかけてのものだ。
携帯電話の爆発的普及で、固定電話の加入率は長期低落傾向にある。契約数から言うと、10年ほど前から携帯のそれが固定電話を上回っている。1人暮らしの有権者の場合、固定電話などないのが当たり前なのだという。携帯電話1台で、さまざまなサービスが受けられる以上、それが必然なのだろう。「携帯族」は増え続ける。もちろん、今夏の総選挙でも携帯族の動向は各党の消長に多大な影響を与える。しかし、選挙情勢調査には携帯族の数字が反映されていない。サンプルに片寄りが生じていることは明らかである。
さらに調査が実施された曜日、時間によっても数字は大きく変わる。平日と土曜・日曜では在宅する家族の顔ぶれも変わる。平日の電話調査の相手が、お年寄りばかりだったという話も聞こえてくる。休日レジャーで不在の家も多い。ここでもサンプルの片寄りは否定できない。
(つづく)
【総選挙取材班】
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