組織の脆弱さを露呈
10年間で8棟の「I・CELEB」を供給し、不動産業者仲介業者からも販売後の入居は好調と評価されていた。09年6月末時点では、完成物件2件、未完成物件2件の計4件を購入する予定だった。また、不動産管理業務では、区分所有オーナー約400名から約100棟550件、管理手数料は賃料の平均約7%で管理委託を受けていた。
裁判所に提出された陳述書によれば、不動産管理事業は㈱アセット(代表取締役:吉冨徳泰、登記上:城幸代)に譲渡された。アセットは、同社の顧問税理士を務めていたアイリス税理士法人(代表:城行永)の関連会社である(株)IRIS保険サービスを08年12月に社名変更したもの。
理由として、オーナーが全国各地に散在し、その大半が賃料収入物件として見ていること、必ずしも賃料回収がスムーズにいく物件ばかりでないことを勘案し、不動産管理を一括して早期に不動産管理会社に譲渡することがオーナーの被害を最小限に食い止めると判断したためとしている。
ただ、当初は入札によって決められたものではなかったため、再度入札を行ない、結局は550件のうちアセットが約150件、サカグチホールディングスが約250件、残りを他の管理会社が管理することになったと聞かれる。
今回の倒産は、ひとえに営業力低下と不動産不況が招いた結果だといえようが、やはり組織としての脆弱さを露呈したと評さざるを得ない。社長自身が細かい部分での実務を把握できておらず、トップ営業マンが財務にはノータッチ、人材育成もままならない状況だったということで、組織作りに失敗した事例といえる。
破産前、宮本氏は従業員との温度差、ベクトルのズレを痛感させられていたようだった。同業関係者は、「この業界は特異で、ファミリーマンション販売とは違って、立地や価格次第で売れ行きが見通せるわけではない。月並みかもしれないが、とにかく個々の営業マンの営業力やモチベーション、愛社精神が不可欠だ」という。
投資型マンションの世界では、往々にして同じ業界で経験を積んだトップ営業マンが独立して新会社を設立している。宮本氏もその1人だった。今回の同社の倒産劇は、そうした業界に関わる人たちにとっては、1つの経営教訓となることだろう。
【大根田康介】
【2009年8月24日号「IB」掲載。決算書は省略】
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