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上場企業を斬る

市場を見極められず後退局面続く 積水ハウスに今何が起きているのか(4)
上場企業を斬る
2009年8月27日 08:00

<マーケット無視のツケ、逃したシェア回復できず>

 タマホームの着工戸数は、すでに在来木造住宅メーカーの住友林業を遥かに凌駕しており、資材メーカーに対するバイイングパワー(Buying Power)もそれなりに持ち得るようになった。しかし、対する積水ハウスは、孤高にそびえてマーケットの変遷を無視し続けてきたのである。同社の得意分野である低層賃貸アパート分野も高級化路線に偏向し、家賃が7万円以上もするような物件から入居者が細っていった。30年間入居保証の大東建託や、値下がりを続ける都心部の賃貸マンションに需要が逃避しはじめ、これも同社の得意分野であった積和不動産の入居保証能力が低下してきている。これまでのリピーターであったJA系の農家なども、不満が募って積水ハウス離れを起こしている。
 また、日産自動車社長にカルロス・ゴーン氏が着任後、大幅なリストラ策と部品仕入先の絞り込みで、強烈なコストダウンを実現して業績を急回復させたのを目の当たりにし、仕入先に対して従来にないコストダウン協力(値引き)を毎期にわたって要請し続けた。
 こうして得た収穫は、各支店への販促策や新商品の開発費として使われることなく、決算上の増益として計上され続けたことは、弊社のこれまでの記事でも指摘し続けてきた。その結果として『顧客満足度(CS)』=『高機能・高価格商品』追求路線をひた走り、顧客が求めている『高性能で購入しやすい価格帯の商品造り』を怠ってきたツケが回り、受注を減らしていくこととなった。
 その間、私鉄沿線の最寄り駅周辺でローコストのミニ分譲で業績を伸ばしてきた一建設(株)、(株)アーネストワン、飯田建設(株)などのパワービルダーや、タマホームなどのローコスト住宅メーカーにシェアを奪われていくことになった。住宅取得年齢層が年々若年化していき、所得の低い低年齢層が一次取得者層として、いきなりローコストの戸建住宅を購入していったのである。結婚して、まず賃貸アパートに入居し、それからマンションへ移り、所得が増えてきたら戸建住宅の購入を考える、という時代ではなくなってしまっているにも関わらず、積水ハウスは現在、需要の最多ボリュームゾーンとなっている30代前半層向けの商品開発を怠ってきた。慌てて子会社の「積和不動産」に『MAST』と称するローコスト在来木造住宅分譲事業に乗り出させたが、なかなかコスト切り下げがうまくいかず、シェア回復にまで至っていないのが実情だ。

(つづく)

【徳島 盛】


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