福岡7区で「無駄」と批判される公共事業の現実を見てきた。
八女の大自然のなかにコンクリートの巨躯を晒す「朧大橋」。50億円近くの税金を投入したあげく、招き寄せたのは産業廃棄物処理場計画と暴走族だった。橋そのものが道路建設という別の公共事業への誘導装置であることも明らかだ。
疑問の声をよそに進められる「筑後船小屋駅」。大牟田、久留米と県南にふたつの新幹線新駅を持ちながら、中間地点である筑後市に追加設置されたことに対し「政治的」との批判が絶えない。そして、この駅もまた新たな公共事業を作り出す誘導装置となっている。
高速道路でありながら無料で走れる「有明海沿岸道路」。公共事業の適正規模について考えさせられたが、現在も建設工事は進んでいる。
問題は、そのどれもに、事業実現に尽力した自民党・古賀誠元幹事長の名前が冠され「誠橋」「誠駅」「誠道路」と揶揄されることだ。古賀氏自身も「朧橋が『誠橋』であれ、有明海の道路が『誠道路』であれ、なぜ、今それを必要としているのか考えていただきたい」と胸を張る。1人の政治家の力が、これほど強大なものであっていいのだろうか。税金の使い方が公共事業に偏り過ぎてはいないのか。
福岡7区で最大の都市・大牟田は、かつて20万人を超えた人口が減少の一途をたどり、現在は12万人台にまで落ち込んでいる。石炭で栄えた同市だが、衰退を止めるすべを見出しきれていない。市内を歩けばシャッターを閉めたままの店舗や空室ばかりのビルが散在し、市内の商店街にも活気はない。「道路はもういい。古賀さんはこの現状を変えられなかった。橋や道路ができたからといって人口が増えるとは思えない。それより生活を楽にしてほしい」(大牟田市・60代女性)、そうした声もあがりはじめた。
「公共事業一辺倒の地方振興策でいいのか?」。8月30日の投票日には、福岡7区の有権者がその答えを出さなければならない。