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発信!北九州

北部九州の自動車産業の現状を読む(4)
発信!北九州
2009年9月 3日 08:00

松本工業(株) 代表取締役社長 松本茂樹氏
~自動車不況という逆風を乗り越え、日々改善で時代に合わせた変化を

<『日々改善』の必要性>

 ―そうすると、現場のスタッフから「こうしたい」、「こうするべきだ」というような意見が挙がってくるのですね。

 松本 そうです。スタッフには、コスト削減のための改善点を挙げるように指示しています。自分たちが作業をしやすい環境を作り出すためには、継続的に改善するべきですね。当社では、現場から年間1,000件以上の提案が出ます。そうするとスタッフの意識が上がります。意識が上がるとおのずと技術も上がるのです。  当社は二次メーカーです。言い換えれば、二次メーカーとは「部品委託加工業者」です。決して部品メーカーではありません。しかし、一次メーカーになるには資金的、技術的などの要素が不可欠であり、難しいのが現状です。しかし、当社も単なる加工屋ではなく、「メーカー」の位置付けとして認識されたいのが本音です。「1.5次メーカー」を目指すと言った方がわかりやすいでしょうかね。

 ―自動車メーカー側との打ち合わせなどにも参加されるのでしょうか。

 松本 もちろん参加します。たとえば、シートを作る際には、自動車メーカー・シートメーカー・そして当社の3社で、図面をもとに共同で議論します。当社はシートフレームを製造していますので、メーカーに対してもコスト面や技術面で提案できます。しかし、二次メーカーは与えられた図面に関しての提案はできますが、自ら図面を描くことはできません。やはり図面の段階から参加したいですね。

 ―開発段階から参加するために、目先をあげる→技術をあげるということをしているのですね。

 松本 自動車は技術の結晶ですから、高度なことが要求され、参入するには相当な時間が必要です。さらに、経営者が参入すると「覚悟」を決めたからには、明確な計画が不可欠です。経験則から言えば、自動車産業への参入には中長期的と短期的ビジョンの両方が必要です。当社は参入当時、自動車部門は「健全な赤字部門」としての位置付けをとり、それを補うために本業の金属加工事業、建築事業、食品スーパー事業の利益を、自動車部門へ投資してきました。自動車産業への参入はそこまでの覚悟が必要ですね。

 ―御社は自動車関連のほか、建設業などの事業を行なっておられますが、今後、目指すべき方向性についてはいかがですか。

 松本 もちろん、現在売上の70%を占める自動車を中心に事業をしていきます。アメリカの自動車メーカーが破綻した原因のひとつには、本業のクルマを作ること以外の理由がありました。逆に日本の自動車メーカーは本業に徹していますので、まだまだ底力はあります。日本は資源がないので、内需主導のみでは経済が成り立ちません。絶対に輸出が必要です。輸出するのは製品に限りません。技術やソフトの面でも輸出は可能です。
 そのなかで、当社は現在、2015年にはグループ全体で70億円の売上高を目指す5カ年計画を各部門と練っている最中です。というのも、各事業には寿命があります。当社の過去20年間の主力受注先を見ても、20年前と現在では、同じ顧客でも受注額は異なります。事業には時代にあったサイクルがあり、これに合致しないものは変化させる必要があります。自動車に限らず、どの業種でもあてはまることだと思います。
 私は経営者ですので、理念、哲学やあるべき姿を示さねばなりません。これが当社の方向性となり、結果を出すための行動を社員が取ります。その結果として、問題発見があり、改善へと流れます。常に改善しようとする心と行動こそが品質の向上、競争力の強化となるわけで、これこそが企業理念です。明るく楽しく改善する―活き活きとした若手スタッフを見ていると会社の将来が見えてきます。

 ―あえて高いハードルに挑戦し、それを越えてきた御社は、これから自動車産業への参入を描く企業への確かな思いとなると思います。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

 松本 こちらこそ、ありがとうございました。

(了)

●取材後記●
 地場企業の自動車産業参入を促進している施策はたくさんあるが、地場企業が単純に行政に依存しているだけでは参入することはできない。自動車はそれほど難しいのである。  しかし、今後も北部九州地域への自動車産業の集積化が進んでくることは間違いない。現状のままでは、仕事はあるが人材が不足する、という事態に陥ることも考えられる。地場企業が参入しないのであれば、当たり前ではあるが、関東や中部地区の自動車に強い企業が現れてしまう。こうなると、地場の雇用情勢にも変化が出てくる可能性もある。これまでの取材を通じても、さまざまな方が自動車産業への参入の難しさを語っていた。それと同時に、すでに参入した企業の担当者が「覚悟」を決めて「真摯な姿勢」で望むことが最も必要であると、口を揃えてコメントしていたことは何よりも印象深い。  松本工業(株)は地場二次メーカーとして最も成功したと言われている。しかし、その裏には松本社長自身の強い思いと、それを成就させるだけの戦略があったからこそである。「まだまだ、自動車産業には夢があり」、「課題はたくさんある」と語る松本社長の視線が非常に印象的であった。

【文・構成:新田 祐介】


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