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【特別座談会】今、問われる上場の意義と再生を担う金融機関のあり方(2)
特別取材
2009年9月 3日 08:00

もはや上場が目標ではない

 浜崎 創業者のモノの考え方、コンプライアンスの問題も含めて、企業統治した場合に、その経営者がどういうスタンスで営業をやるのかという部分もありますよね。イケイケドンドンでやるのか、それとも慎重に経営していくのか。その取締役会のなかで、代表取締役の発言力がどれだけあるのか、他の役員がそれに対してノーと言えるのか。黒木社長が経営されていたなかで、このあたりの傾向はいかがでしたか。

 黒木 各取締役や監査役もいますし、独裁的なやり方というのはないですね。物件の仕込みなども稟議に上げて、取締役が5人いれば3人以上の過半数でOK、というような感じです。

 浜崎 企業の場合、代表取締役の考えと時代の流れとが一致すればいいのですが、これが逆作用するとやはりうまくいきませんよね。それと金融機関も、良ければドンドンやるし、ちょっと悪くなると全部引いてしまいます。そういう、金融機関の変わり身の早さなどを感じられたのではないですか。

 黒木 それはもう、昔から分かっていました。ただ今回は、世界的な経済不況の煽りを受けて、特にそれが激しいように感じます。最近も一部上場されている不動産会社の社長と電話で話したのですが、今は全部元利金ストップでやっている、と。そして民事再生しようにもキャッシュがなくて、基本的には破産しかないとおっしゃっていましたね。

 石崎 不動産業の場合は、棚卸資産も含めてこれだけ価格が下がってきたので、基本的には民事再生をかけても自己破産に持っていかざるを得ない、というのが現状のようですね。

 黒木 やはりキャッシュがベースなので、残っていれば破産せずに十分やっていけるのですが、残っていなければ破産ですよね。
CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合 代表理事 真部 敏巳 氏
 真部 結局、早く再生への処理をしていれば、良い資産などは後々処理することもできます。しかし、処理が遅くなるほど先に良い資産を処分してしまって、それを延命措置のための資金として使ってしまうので、最終的に残った資産ではどうしようもなくなってしまって、自己破産に移行せざるを得ない状況になりますね。

 浜崎 上場企業が破綻すると社会不安にもなりますし、それで雇用情勢が悪くなるといけません。そこで今は銀行も金融庁も、「まぁ何とか見ておいてやれ」と延命措置をするような動きが出てきているように感じますね。最近バタッと倒れるところが少なくなってきたのは、そういう面があるような気がします。

 —以前は、いわゆる上場というのは、最終ではないにしても企業にとっての一つの目標だったわけですが、それが今は少し変わっているような感じがします。

 黒木 情報を開示する必要などもありますし、上場メリットがなく、上場を廃止する企業も出てきましたからね。その業種が伸び続けているうちは大丈夫なのですが、今からデベロッパーやゼネコンが伸びるかといえば、ちょっと難しいと思います。しかし、その裏でこれから伸びてくる企業はあるでしょう。そこはやはり頑張ってもらいたいな、と思いますね。

 浜崎 今後、どういう金融機関と取引をしていくのが一番ベストなのか、お感じになられることはありますか。

 黒木 実際のところ、金融機関の取締役とかトップが、その企業をどう思っているかですよね。ただ、今回のような場合だと、本当に金融機関側にそういった経験があるのか、慣れているのか、という部分も関係してきます。例えば、A銀行に相談していれば、苦しい思いをしながらも、延命措置的な状態だけれども生き残ることができたり、B銀行に相談したがために、もうダメだという状態になったりと、そういうところは出てくると思います。

 浜崎 私も銀行の支店長をやっていましたが、破綻懸念先がJAS法違反などで社会的制裁を受けた場合、救済することが難しいのです。正常先で品質保全の問題があったときには、要注意としてでも救えたり、要注意のなかでもある程度軽ければ救えたりするのですが。こういうことを、地域性も見ながら、この企業は残しておく方がいい、というような判断を金融機関の上層部が出来るかどうかですね。今は、銀行員自体がサラリーマン化してしまっているので、企業格付けで決まってしまったら、それ以上のことは絶対にできません。ですから、銀行員の質的な問題も、今後問われるべきじゃないかと私は感じています。本当に企業を助けていく、銀行も地域経済を支援するんだ、という使命感がだんだんなくなってきているように思います。

 黒木 リーマン・ショックなどいろいろな流れを見ても、金融のメカニズムを熟知していない銀行が多々あったように思えます。本当は脇役にいなければならないのに、金融業が主役となって、融資を伸ばしたいがための融資をやったり、貸し出しを増やしたいがために不動産屋に土地を買わせたりなどをやっていました。そのあたりのメカニズムは、バブル時代の昔から変わっていないように思います。

~つづく~

【文・構成:坂田 憲治】

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