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【特別座談会】今、問われる上場の意義と再生を担う金融機関のあり方(5)
特別取材
2009年9月 7日 08:00

金融機関のあるべき姿
再生支援の担い手

 浜崎 今、銀行があるべき姿とはどういうものなのか、ということをもう一度考えなければならない時期に来ていると思っているのですが。

 真部 地方に行くと、金融機関しか再生の担い手がいないのが現状です。地方では金融機関がいろいろな意味で決定権を持っていますし、人材も集まっています。ただやはり、国の方針ひとつで右に左に揺れてしまうので、仮に動こうと思ってもなかなか動きにくいところに置かれていることは事実なのではないでしょうか。ですから、それぞれの金融機関がどう考えてやっていくか、というところだと思います。ところが金融機関の経営陣も、企業の再生ということが最終的には収益力の回復にもつながりますし、それが銀行の経営基盤を作るという人と、あまりそこまでの強い認識は持たずにとりあえず金融庁に言われるからという人と、はっきりと分かれている感じがします。とくに地域、地方においては金融機関が再生や支援の担い手であるという考え方を、もっとしっかり押し支えていく必要があるでしょうね。地域を支えていくいろいろな人や機能を育てて支援していくのが、金融機関、銀行の本来のあるべき姿だと思っていますので、そういう意識をもう一度構築していくことが大切だと思います。現実問題としては、やはり地域の金融機関の支援がないと再生できないケースが多いですから、その地域の金融機関がいろいろな意味で支援できる力量や方針などを持っていかなければ難しいのではないでしょうか。本当は、銀行の再生セクションは、独立させるべきです。たとえば、一部の金融機関はサービサーを持っていますが、そこを別会社にして再生を専門にやって、自社の母体である銀行に対してもきちんと指導できるような、そんな機能を持たなければいけないと思います。
Dipro(株) 黒木 透 氏とCRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合 真部 敏巳 氏
 黒木 どちらかというと、今は不良債権の切り離しをするためのサービサーですよね。本当は企業を再生させるためのサービサーでなくてはならないのでしょうが、実際はなっていませんよね。

 真部 結局、金融庁の管轄下の発想なのです。今回の一連のことでも、不良債権処理という債権者側からの視点ですよね。本来再生というのは、債権者側の視点でやるべきものではなくて、債務者の企業の事業をどう考えて育てていくか、そこに債権をどのように当てはめるか、というのが順序です。ところが、発想が逆だから不良債権の処理というものがまずあって、銀行のバランスシートをきれいにすることによって、間接的に債務者のバランスシートがきれいになって再生する、というような発想をしているから、ものすごく違和感があります。

再生支援の仕組みづくり

 —再生に対しての地域差はありますか。

 真部 銀行の取り組みが積極的なところと、そうでないところと、多少差はあるように感じます。地域的な気質の問題もありますが、そこは金融機関次第だと思います。地域の金融機関が熱心に再生などに取り組んでいるところは、気運もあるし、実績もあります。再生の手法についても、財務を含む再生支援に取り組めるところと、リスケ的な対応しかできないところとの差はあります。ただ、九州はあまり「取り組んでいる」という感じがしませんね。いわゆる実抜計画という話になると、どうしても財務の再生が伴うという話が中心になりますから、そうなると九州・山口管内で取り組めるのは、いくつかの銀行ぐらいしか今のところはありません。

 石崎 地域によって、信用金庫クラスが強かったところの方が、そういったものを受け入れやすいというのはあるのでしょうか。

 真部 全てがそうではありませんが、少なくとも金融の枠組みでいうと、保証協会で20年の融資を持っている京都などはしっかりしていますね。やはり地域の金融機関、保証協会、再生支援協議会、それから県の窓口になるようなところ、そういった機関が一体で取り組んでいかなければなりません。仕組みをつくっていかなければ、再生できる環境もできないわけです。いくら事業で頑張るといっても、資金がまわってこなければやっていけないわけです。資金がまわる仕組みをどう支援していくかという「枠組み」を、その地域の実状に合わせてきちんと作ることができるか、というところです。今の枠組みでは、リスケをした先や延滞のある先については、保証できないという仕組みになっています。そうすると、リスケをして資金を使い切ってしまったら、仮に「新規で良い仕事の話が出てきたから金を貸してくれ」といっても、「実績を見てからにしましょう」という話になり、実績を見ているうちに、その仕事のプロジェクトがなくなってしまう。今、現場で起きているのは、こういう話です。とくに不動産業や建設業は、最初に多額の資金が必要になりますから、その大きな資金を出す仕組みづくりをしなければ、再生することができないのです。

~了~

【文・構成:坂田 憲治】

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