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山水建設への遺書(8)  コンプライアンスへの警鐘 ―その1/野口孫子 氏
経済小説
2009年9月 8日 10:05

コンプライアンスへの警鐘 1

 3年前に福岡で、飲酒運転による追突で橋の上から車ごと下の海に転落、幼い子ども3人が死亡するという悲惨な事故があった。そのニュースは瞬く間に全国的に衝撃が走らせた。以来、全国的に飲酒運転撲滅の運動が強化されて行なわれてきた。
 しかし、それでも一向に飲酒運転は止まず、あげくの果てには取り締まる側の警察官まで飲酒運転で逮捕されるという事態になっている。あいた口がふさがらない。警察内部でも取り締まる側としてはもちろん、仕事のモラルとしても、コンプライアンスについて徹底的に指導が行なわれているはずである。
 それでも、やってはならないことを破ってしまう。何故だろうか。
 「法令を破ることは、分かりながらやっているとしか考えられない」。それは事故を起こした場合、事の重大さがわかっているからこそ、逃げるか、証拠隠滅を図ろうとすることからもわかる。「酒が入れば、車に乗らない」という単純なことが守れない。

 組織のなかで士気が落ちているのが、大きな原因だと考えられる。
 トップがいくら毎日声高に「法令順守!」と叫ぼうが、士気の落ちた組織にいる人たちには聞こえてはいない。士気の落ちた原因を探り、排除しない限り、この種のことは繰り返され、「おざなりの陳謝と再発防止をする」とテレビの前で平謝りするだけである。

 山水建設もコンプライアンスについては、トップからことあるごとに、社員に指導、注意を喚起している。
 しかしながら、過去、営業停止になるような大きな法令違反を起こしたことがあった。企業の法令違反は一歩間違えば、マスコミからバッシングを受け、会社の信用を失墜させ、倒産へ追い込まれかねない重大なことになる可能性もあるのだ。過去に、産地偽装、耐震強度偽装、などで、企業が市場から退去していった例は後を絶たない。
 しかしながら、いくら山水建設トップがコンプライアンスを口酸っぱく訴えても、小さな法令違反は後を絶たない。これには山水建設内部に、大きくは二つ問題点を抱えていることが考えられる。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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