日本では少子高齢化が問題視され始めて久しいが、アメリカでも高齢者の人口が増加の一途をたどっており、医療や介護の面で大きな負担となっている。エドワード・ケネディー上院議員が亡くなったばかりであるが、医療保険問題の改革に取り組んできた旗頭であった。バラク・オバマ大統領と共に国民皆保険制度に向けて新たな法案作りに取り組んでいた矢先の死去であり、オバマ政権にとっては強力な味方を失ったことになる。
いわゆるベビーブーマー世代が相次いで第一線を退き始めており、アメリカでは高齢者予備軍と言われる人々の間で健康管理が関心を集めるようになってきた。アメリカでは100歳以上の高齢者は「センテネリアンズ」と呼ばれ、12万人に達しており、今後も増え続ける勢いが見られる。日本の場合は「百寿者」と呼ばれているが、その数は3万人強である。
ということは単純な人口割合でいえば、1億人の日本で100歳以上が3万人いるとすると、人口3億人のアメリカでは9万人のセンテネリアンズとなるはず。しかし、実際には12万人もいるわけで、意外にも日本よりアメリカの方がはるかに長寿社会ということになる。肥満や糖尿病患者が多いわりには、国民全体でとらえれば、アメリカ人の方が健康ということであろうか。
そんなアメリカで、このところ大きな注目を集めているのが「リバース・エイジング」という発想法である。我が国ではアンチエイジングという言葉が普及しているように、いかに年を取ることに抵抗するかという発想から、美容整形や運動、食事の内容を工夫し若さを保とうとするビジネスが急成長を遂げている。しかし、アメリカで話題となっているリバース・エイジングは年を取ることをストップさせようとするのではなく、「自らの年齢を20歳ほど若返らせる」ことを目標としている。
そのためには、本人の意識に働きかけることが重要としており、表面的にシミやしわを取り除くとか、ホルモン注射によって肌の張りを取り戻すとかといったアプローチとは一線を画している。この若返り運動の提唱者は、ハーバード大学で女性初の心理学教授となったエレン・ランガー教授である。
彼女に言わせれば「若返りのためには医師に頼る必要はない」ということ。アメリカの国家財政の重荷になっている社会保険費を減らすためにも、75歳の高齢者が55歳まで若返ってくれれば、大きなメリットが生じるというわけだ。しかもその方法は極めて簡単で、一人一人の生理学的な体内時計を20年前に巻き戻すというのである。
【浜田 和幸(はまだ かずゆき)略歴】
国際未来科学研究所代表。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。
ベストセラー『ヘッジファンド』(文春新書)、『快人エジソン』(日本経済新聞社)、『たかられる大国・日本』(祥伝社)をはじめ著書多数。最新刊はオバマ新政権の環境エネルギー戦略と日本への影響を分析した『オバマの仮面を剥ぐ』(光文社)。近刊には『食糧争奪戦争』(学研新書)、『石油の支配者』(文春新書)、『ウォーター・マネー:水資源大国・日本の逆襲』(光文社)、『国力会議:保守の底力が日本を一流にする』(祥伝社)、『北京五輪に群がる赤いハゲタカの罠』(祥伝社)、『団塊世代のアンチエイジング:平均寿命150歳時代の到来』(光文社)など。
なお、『大恐慌以後の世界』(光文社)、『通貨バトルロワイアル』(集英社)、『未来ビジネスを読む』(光文社)は韓国、中国でもベストセラーとなった。『ウォーター・マネー:石油から水へ世界覇権戦争』(光文社)は台湾、中国でも注目を集めた。
テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍中。「サンデー・スクランブル」「スーパーJチャンネル」「たけしのTVタックル」(テレビ朝日)、「みのもんたの朝ズバ!」(TBS)「とくダネ!」(フジテレビ)「ミヤネ屋」(日本テレビ)など。また、ニッポン放送「テリー伊藤の乗ってけラジオ」、文化放送「竹村健一の世相」や「ラジオパンチ」にも頻繁に登場。山陰放送では毎週、月曜朝9時15分から「浜田和幸の世界情報探検隊」を放送中。
その他、国連大学ミレニアム・プロジェクト委員、エネルギー問題研究会・研究委員、日本バイオベンチャー推進協会理事兼監査役、日本戦略研究フォーラム政策提言委員、国際情勢研究会座長等を務める。
また、未来研究の第一人者として、政府機関、経済団体、地方公共団体等の長期ビジョン作りにコンサルタントとして関与している。
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