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山水建設への遺書(10)  コンプライアンスへの警鐘 ―その3/野口孫子 氏
経済小説
2009年9月10日 08:00

コンプライアンスへの警鐘3

 もう一つの問題は、社内からのリークによる発覚で、新聞紙上を賑わすことになっているということである。
 営業停止の重い罰則を科せられた法令違反も、内部告発であった。先の確認申請違反も内部告発である。
 内部から告発が何故起こるのだろうか。
 会社で不都合なことが起こっている。無理な目標数字の達成の強要、達成されなければ、人事異動をほのめかされ、脅される。気の弱い社員は止むを得ず、法を犯してしまう。
 このことに良心をもった社員が、無理難題の要求を不正義として現場の上司に訴えても、聞いてもらえない。無視される。本社に訴えてもうまくいかない。
 現場の組織も本社も、ふたをしてしまおうとしている。トップもそのことは知らされない。正義感のある社員は社内に活路がないとして、マスコミ、行政に告発文を送りつけ、その結果問題が大きくなり、慌てふためく。
 内部告発は、場合により会社の信用をなくし、存続すら危うくなることもある。社員としては、もっともやりたくないことである。それなのにやむを得ず告発が行なわれたのは、坂本会長が専制君主のような組織に起因している。
 会社のなかで正義の主張が握りつぶされ、自分の昇進に汲々として不都合なことを隠したがる幹部がたくさんいるのである。特に、坂本会長にゴマをすって出世をしてきた連中は、どれだけ部下を踏み台にしてきたことか。
 斎藤新社長は「昔のような、風通しの良い組織を」と訓示しているが、所詮は念仏に過ぎない。
 閉鎖的な、透明度の低い、隠ぺい体質の会社である限り、法令違反はなくならないし、内部告発は続くだろう。
 本気でコンプライアンスに取り組むのであれば、坂本会長自身から、どんな小さなことでも情報開示させ、トップから発信していく姿勢が大事だろう。
 トップの先手必勝の情報開示が、一番重要だと思われる。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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