北九州市は近代国家建設のため、1901年に創業した官営八幡製鉄所を中心とする重厚長大産業が発展する過程で、大きな代償を払った。工場からの廃水や煙害で深刻な公害が発生、一時、工場の廃液が流れ込む洞海湾は大腸菌すら存在できない「死の海」と化し、「公害の街」、「灰色の街」と揶揄された。
しかし、この公害問題は北九州市民が解決した。50年代に戸畑の婦人会が立ち上がり、何としても公害問題を解決したい、という一心で社会全体を巻き込んだ運動を起こし、見事に解決に至った。この運動は「青空がほしい」という映画にもなっている。このような経緯もあり、北九州市は2008年7月に政府より環境モデル都市に選定された。各マスコミで報道されている通り、今や世界全体が「環境」や「エコロジー」がキーワードとなっていることは周知の事実であり、今後もこの流れは続くと思われる。
一方、民間企業に目を移してみると、多くの企業が「環境」分野に進出している。なかでも、全戸個別型太陽光発電搭載型マンションで全国的に名を馳せている芝浦グループ(本社:北九州市小倉南区、代表:新地哲己氏)の活動は注目である。同社は「地球を守ろう」をスローガンに太陽光発電付賃貸マンションを開発。各世帯で発電された余剰電力を電力会社に売電できることが人気を博し、福岡県内の同社が開発したマンションはいずれも満室状態が続く人気の物件である。さらに今年11月1日より、電力会社が買い取る余剰電力の金額が現在の2倍となることが発表された。住む人にとっては大きなメリットである。
また、先ごろ同グループは電気自動車の販売を開始した。徹底的に「環境」に拘るため、今後は戸建住宅にも進出することが決定しており、計画は粛々と進んでいる。同社の戸建住宅に関しては別の機会に改めてレポートする。
そのようななか、北九州市は芝浦グループをはじめとする企業と低炭素社会実現に向けた実証モデル事業を開始する。この事業は北九州市の中心部を流れる紫川のほとりに、太陽光や風力などの発電設備を建設、低炭素社会実現に向けたモデルの開発をするものである。設置場所は小倉北区城内の商業施設・リバーウォーク前となり、買物客など多くの方々の目に触れることが予想されるため、都市空間にマッチしたデザイン性の高いものになる予定。間もなく、設置工事が開始され、今年11月下旬には完成予定となる。
環境モデル都市に相応しい事業として、今回の計画がプロトタイプになることを願ってやまない。
【発信・北九州】
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