コンプライアンスへの警鐘4
山水建設の法令違反の不祥事が後を絶たないのは、経営トップに最大の原因があると断じてもいい。
坂本会長は斎藤を社長に任命しながら、全ての権限は自分に集中させたままなのである。役員会の議長も株主総会の議長も会長坂本が議長として仕切り、役員・幹部社員の人事権も依然持ったままである。
これでは、斎藤社長はお飾りの、坂本の意のままの社長に過ぎない。このような状態では、斎藤社長は何ら新施策を出せないまま、1年が過ぎようとしている。新社長斎藤の顔が見えないのである。
相も変わらず、全役員、幹部は坂本の顔色をうかがうばかり。坂本の希望的数値目標を、役員、本部長、支店長はけなげに達成しようと必死になる。結果、部下に強制し、背伸びさせてしまう。無理の上に無理を重ねさせ、粉飾決算まがいの要因が含まれてしまうのである。
この倫理観のなさが、会社の人心を荒廃させ、ロイヤリテイーのない社員を生む結果になるのである。
この1年、世界同時不況とともに山水建設の業績は様変わりし、創業時以来の40数年ぶりに、赤字会社に転落しようとしている。
このような業績悪化時には、本来は「役員の報酬、賞与カット」を率先してやるべきである。それにも関らずこの10年、社員の報酬は下げているのに、坂本会長以下役員は平均の倍以上に報酬を引き上げている。
「経費節減に伴う昇給停止」、「営業手当のカット」、「賞与カット」、「退職勧奨制度の条件引き下げ、対象年齢の引き下げ」、「人員削減」、「本社部門から大量の現場への配置転換」「工場閉鎖」等、自分たちには何ら手をつけることなく、従業員に対して真っ先に我慢を強いたのである。
崇高な企業理念を掲げている会社が、この非常時に「役員、幹部は離れで、すき焼きを食べている」と、どこかで聞いたような状況になっている。
この経営陣の欲ボケの姿に、心ある社員の士気は嫌でも低下せざるを得ない。
(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)
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