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特別取材

西原食品(株) 競争激化に沈む 過大投資も足引っ張る(2)【倒産を追う】
特別取材
2009年9月11日 08:00

大型スーパー出店

 3年前、全国の有力スーパーで組織するAJS(オール日本スーパーマーケット協会)に加盟したのは、スーパー経営のノウハウ不足を補うのと、社員教育を充実させる狙いから。AJSはサミットや関西スーパー、九州では中村ストアーやスピナといった名だたるSMが加入し、互いに運営ノウハウを公開して勉強会を開いたり、共同で社員教育を行なうなど、加盟店の団結の固さで知られる。4月、西鉄ストアに統合されたスピナはAJSの店づくりのノウハウを導入し、業績を飛躍的に向上させたといわれる。

 AJSの指導で06年、稲築店と中間店を立て続けに開業。売場面積はそれまでの同社の主力だった300坪(1,000(株)弱)未満の小型店より一回り大きい500坪クラスで、グロサリーの品揃えを増強したほかベーカリー店を併設、「今後の出店はこのタイプで行く」と期待をかけていた。半面で、生鮮の鮮度と品質保持のためバックヤードに高額の機械を導入するなど、通常のスーパーに比べ、投資金額はかさんだ。

 結果的にはこれが財務体質の悪化を招き、破綻の遠因となった。スーパーに進出して10年余りで、資本蓄積が乏しく人材も育成途上にあるなかで、売上拡大を急ぐあまり身の丈以上の過大投資になってしまった。

 その一方で、競争環境の激変で収益が圧迫されるようになる。SMだけだった競争相手に、ディスカウントストアやコスモス薬品などの異業態が加わり、低価格を武器にする新興勢力に顧客を奪われ始める。値下げで対抗するが、かえって体力をすり減らすことになる。5年前開設した宗像市赤間店は、ルミエールが生鮮テナントを導入すると、わずか1年余りで撤退に追い込まれた。

 05年9月期は売上高66億円と過去最高を記録したが、翌06年は売上高57億3,700万円と大幅減収で、経常損益1億2,700万円、当期損益1億5,800万円の赤字に転落。翌07年は売上は新店効果で58億5,200万円とやや持ち直したが、経常、当期損益ともそれぞれ1億6,300万円、1億4,600万円の2期連続赤字で、1億2,700万円の債務超過に陥った。

 同族経営特有の温情主義で、抜本的なリストラが遅れたとの指摘もある。赤字が2期続くと取引先が警戒し、商品供給を絞り始める。リストラに本格的に着手したのは、3期連続赤字になった08年9月期からで、赤字の通谷店を(株)エル三和に営業譲渡。今春には前原、飯塚、水巻、千鳥の4店を(株)ハイマートに従業員とともに譲渡し、稲築、中間の2店に縮小して出直す再建計画を策定、6月から実施に移したばかりだった。

 再建計画は主力金融機関と主要取引先の支援を取り付けていたが、一部取引先の協力を得られず、7月27日以降の資金繰りが困難になったことから、自力再建を断念した。5月中間店近くにルミエール水巻店が開業し、打撃を受けたことも一因となった。

(つづく)

【工藤 勝広】

【本稿は8月6日号「IB」に掲載】


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