独自色を描けず
西原食品の地盤である北九州は九州最大の流通激戦地。先発のサンリブ、丸和、スーパー大栄の本拠地にバブル崩壊後、後発のハローデイとレッドキャベツが割って入り急成長。これらにトライアル、ルミエールのDSが加わり、価格競争の激しさは全国でも有数といわれる。
競争激化で04年には、とみやま、綜合スーパーまるよし、05年丸和、みつわショップが相次いで経営難に陥り、丸和はユアーズ、とみやまは明治屋産業の元社長・谷尾凱夫氏が率いる横須賀産業の傘下にそれぞれ入った。06年末には、おおうち、なかのを買収して日の出の勢いだった石原商事が破綻、九州の流通業界では寿屋、ニコニコ堂以来の大型倒産となった。その後も07年6月のエスマート、08年10月の「キッチンポケット」のアクトと、中堅・中小スーパーの破綻が起きている。
中堅・中小SMは財務基盤が弱いうえ、仕入コストが大手スーパーやDSより高い。生鮮3品に強いスーパーは鮮度と品揃え、価格で大手やDSに対抗する道はあるが、そうでない企業は大手が進出するとたちどころに影響を受ける。
西原食品やアクトなどの破綻したスーパーに共通するのは、先発・後発、同業態・異業態が入り乱れて競争をするなかで、明確な生き残り戦略を欠いていたことだ。サンリブや丸和と違い、地域での知名度も高くない。その意味では、競争に埋没しかかっていたスーパー大栄が鮮ど市場に生き残る道を求めたのは、正しい決断だった。
西原食品の店舗はハイマートが継承する公算が大。経営難のスーパーを大手や好調企業が傘下に収める業界再編の動きが、不況の深刻化で再燃するかもしれない。
【工藤 勝広】
【本稿は8月6日号「IB」に掲載】
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