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山水建設への遺書(12)  コンプライアンスへの警鐘 ―その5/野口孫子 氏
経済小説
2009年9月14日 08:00

コンプライアンスへの警鐘5

 山水建設のトップはことあるごとに「法令順守」と社員に訴えているが、不祥事発生時の処理をみる限り、単なる「念仏」に過ぎないことが分かる。

 部下である、事件を起こした幹部が、坂本、斎藤に事件の詳細を報告する。しかし、部下が「悪い情報は隠したがる」習性を見抜いていない。
 結局は、「すべてを担当の責任感のなさ」として、すべての責任を転嫁し、奥に潜んでいる根本原因を見逃している。いや、本来であれば最終的な責任は坂本、斎藤にある。それを尻尾切りで収めたということだろう。
 社会に大きな不祥事として知らされた以上、すべては社長や実権を持っている会長の責任なのだ。そのあたりの認識がまるでない。

 そのような経営トップの口から「コンプライアンス」と語られるほど、部下にとって白けることはない。
 この業績が悪いなか、自分たちは汗も出さず、血も出さず、「離れで、すき焼きを食べている」と揶揄されるような経営トップ、役員たちには、「倫理観」も「皆と共に苦労しよう」という一体感もない。「自分たちは別だ、トップ、役員の特権」と思っているかぎり、いくらコンプライアンスを叫ぼうが社員の耳には「念仏」としか聞こえない。
 「順法の精神」とは、単に「法律を守る」、「合法のことをする」ということだけではない。トップは、「自分自身の心に従い、何の曇りもない正義」と「自らの心に恥じないこと」を持つ必要があるのだ。これを「倫理」という。

 この「倫理観」が坂本に欠落しているため、単に「法律を守れ」といっても、坂本の言う「契約増大、売上増大」至上命題のなか、競争に勝つために降格や首をかけ、「目標数字の達成」のためを思うあまり、現場の幹部、担当は「この程度なら」、「このくらいなら見つからないだろう」、と法律の一線を越えてしまう。
 坂本に崇高な哲学がないため、今後も不祥事が発生することは否めない。強い倫理観がない坂本がいくら「コンプライアンス」と言ったところで、社員に見抜かれていることを理解せねばならない。
 「自分だけは特権階級」として、「コンプライアンスは社員のやるべきこと」としている限り、下役になるほどに、緩み、大きな綻びとなり、やがて重大な法令違反事件として、会社をつぶすことにもなりかねないのである。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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