まだ残る宣伝部責任者へのアンダーテーブル
企業の経営者はもっと目を光らせろ!
ここまではマクロな視点で広告会社の問題点を分析してきたが、今度は取材を通じて知った、現場で起きている情けない現状をお伝えしよう。
昔から、広告費を多く使う企業の宣伝部への接待は話題となってきた。
大手家電メーカーの宣伝部長は、アンダーテーブルで家を2軒建てたとか、自動車メーカーの宣伝担当取締役は、マンションと愛人をあてがってもらっていたとか、その手の話にはこと欠かなかった。
100億単位の媒体費をどの広告会社に担当させ、どのテレビ局の配分を厚くするのか。広告部門のトップの裁量権は絶大である。
たとえば、広告キャンペーンをどの広告会社に担当させるのかは、各社にプレゼンテーションさせて、その内容の良し悪しで担当社を決めることが一般的である。大きな予算の付いたキャンペーン提案では、各社の現場スタッフが必死で優れた提案を行なうので、選択する側もその評価が難しくなる場合が少なくない。クリエイティブやプロモーションなどの企画の評価は、最初から「この案なら絶対に成功する」というものはなく、機能差のはっきりした機械設備の仕入などと違って、最終的には評価する担当者の「好き嫌い」が大きく影響する。
そうした広告評価の難しさもあり、仕事の内容で他社と競争するのではなく、宣伝部長に対する日ごろの接待で、受注を維持してきた広告会社の営業マンも少なくない。
それでも大手企業の場合は、キャンペーンに関連する全ての部署が、提案された案に対して評価・口出しし、広告会社の決定に関与する仕組みになっているところが多くなっている。しかし、地方の中小企業の場合には、宣伝部長が営業責任者を兼ねていたりと、権力が集中している場合が多い。そのため、宣伝部責任者への接待は東京以上に加熱する。
福岡でも、中洲への接待は当り前で、なかにはソープランドの回数券まで用意していた広告会社の営業マンがいると聞く。
しかし、同じ中小企業でもオーナー経営者が広告を取り仕切っている場合、そういうわけにはいかない。任せた広告キャンペーンの成否で、自分の会社の存続が大きく左右される。「接待に金をかけるより、広告費を1円でも安くしろ!」というのが、経営者の立場だからだ。
取材の過程で、福岡の業界にはまだ「アンダーテーブル」の世界が残っていることを聞き、正直驚いた。宣伝部長などが仕事上の立場でちやほやされ、過剰な接待漬けになり、挙句、つまらない広告会社を使い続ければ、その企業も危なくなる。
経営者の方々、改めて自社の宣伝部に目を光らせる必要はありませんか?
【松尾 潤二】
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