総選挙終了直後の9月はじめ、落選議員の引っ越し作業が進む永田町の議員会館を、生まれて初めて訪れた。そこで再認識したのは、『陳情』が幅を利かしてきた政治の現実だった。
議員室へ通るためには、「面会証」(参議員会館は『面会申込書』)に訪問先の議員名や当方の氏名、住所などの必要事項を記入しなければならない。これを受付に提出し、受付から議員室に通してよいかどうかの確認がとられる。OKが出た後、セキュリティチェックを受け、やっと中に入るというシステムだ。「面会証」を書き進むうち、用件について選ぶところで、手を止めてしまった。一番はじめに、『陳情』とあるのだ。何かおかしい。
政治家に“お願い”をして行政を動かす「陳情政治」の弊害が指摘されてきた。選挙区への利益誘導、贈収賄などは、弊害の最たるものだろう。予算付けに政治家を使うことが、この国の政治を矮小化してきた側面も見逃せない。しかし、「陳情」のため政治家を訪ねる者が絶えないという現実がある。そのことが公然と認められてきたあかしこそ、「面会証」用件欄の一番に記された『陳情』という文字なのではないか。
ある元議員秘書は、10数年前を振り返り「そういえば来客のほとんどが『陳情』だったな。何も変わってないよ」と言い切った。
今月16日に開かれる特別国会で、長く続いた自民党政権が終焉を迎え、民主党中心の政権へと変わる。本当に悪しき陳情政治をなくせるか。政・官・業がそれぞれの役割をきちんと果たす社会へと変わり、議員会館の面会証から「陳情」が消える日が近いことを信じたい。
衆参の議員会館の面会証(参院は面会申込書) (クリックで拡大します) |
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