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山水建設への遺書(15) 赤字決算の予兆―その3/野口孫子 氏
経済小説
2009年9月17日 08:00

赤字決算の予兆3

 このような、すでに信用をなくしている経営トップが何を言おうと、もはや社員の大半は白けていた。創業社長の山田の時代のように、会社を上げた「うねり」のような、「やろう!」という声も聞こえてこない。「いざ鎌倉」というような力は、今の山水建設にはもはやない。
 もちろん同業他社もこの大不況で業績を落としているのだが、山水建設ほどの落ち込みではない。山水建設は坂本の社長就任以来、良き伝統は壊され、社内の士気の低下はもはや目を覆うばかり。ジワリジワリと弱体化していたのである。
 本来であればこれぐらいの経済危機は乗り切れる力があったのに、それももはや「過去の栄光」に過ぎない。今回の経済危機を「モロ」に受けてしまった。

 今回の自民党の大敗北にしても、良識ある自民党議員はわかっていた。しかし、古い体質の執行部、派閥の領袖の意向、流れには抗しきれなかった。国民から完全に離反しているにも関らず、まだ利権にしがみついていたのである。自民の議員は皆分かっていながらも、組織に飲み込まれ、「やましき沈黙」をせざるを得なかったのだ。

 山水建設でも、同様のことが起きていると思わざるを得ない。「坂本会長体制ではもう戦えない」と皆すでにわかっている。しかし、組織に逆らって言えるものは誰一人いない。「やましき沈黙」しかないのであろう。

 6年前の坂本社長時代、業界トップの座を日本建設に奪われていた。山田の時代であれば山水建設は断然トップで、2位以下に圧倒的な差をつけていて抜かれることなど想像もできなかったのに、である。
 これは山水建設は「坂本の経営ではだめだ」というサイン―予兆だったのである。

 前会長の中井は坂本社長に責任追及するものの、坂本には責任を取る気はさらさらなく、坂本との確執の後、中井は責任をとって会長を辞任していった。
 そして、中井が去った後の坂本の天下の今、この経済危機に直面して、さらに山水建設は力を弱めていることに気がつかねばならない。
 経済危機に関係なく、山水建設はいずれ弱体化していた。今回の経済危機をきっかけに、ただそれが早まっただけなのである。

~つづく~

(これはフィクションであり、事実に基づいたものではありません)


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