<霞ヶ関との戦いに先手>
鳩山新内閣が、国民の期待を背負って船出した。新大臣たちは就任会見で「八ッ場ダムの建設中止」(前原誠司・国土交通相)、「後期高齢者医療制度の廃止」(長妻昭・厚生労働相)、「インド洋の給油活動は延長しない」(北沢俊美・防衛相)、「日米密約の調査命令を出した」(岡田克也・外相)などと民主党のマニフェストを直線的に実行する姿勢を示し、《政治の転換》を強く印象づけた。
経済政策では、連立を組む国民新党の亀井静香・金融相が、「住宅ローンや中小企業が抱える借金の元本返済の3年猶予を検討する」とぶちあげて金融界に衝撃を与えているが、これは亀井氏の独断パフォーマンスではなく、鳩山首相が総選挙前に一度言及していたものだ。
《脱官僚依存》を掲げる鳩山政権は、霞ヶ関との戦いにも先手を取った。
鳩山官邸は事務次官会議の廃止に続いて、各省庁に次官、局長などの定例記者会見の原則中止を通達し、新内閣発足最初の閣僚懇談会で、役所側が民主党議員を個別に味方に引き込んで族議員化させないために、官僚と国会議員の接触そのものを制限する方針を申し合わせた。
これでは役所側は新政権の政策に反対の声を上げることもできない。
“お坊ちゃん”の鳩山首相にしては戦上手なやりかただが、実は、主導しているのは薬害エイズ問題で役人とのケンカには定評がある菅直人・副首相兼国家戦略相だ。
「菅さんは6月に英国の議会制度と官僚操縦の仕組みを視察し、政権交代後の対霞ヶ関戦略を練ってきた。副総理という政権ナンバーツーの実権を得て、早速、実行に移している」と、菅側近はいう。
霞ヶ関との戦いは、その菅氏の国家戦略局(当面は室)と、仙谷由人・行政刷新相の行政刷新会議が担う。
菅氏や岡田氏、前原氏らが闘志満々で改革姿勢を前面に出しているのは、それぞれの持ち場で手柄をあげ、いずれやってくるポスト鳩山の後継首相レースをにらんで早くも競い合っているからに他ならない。
【千早 正成】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら