「とにかく露出が足りない。多くの人にまずは知ってもらわなくてはならない」
企業経営者A氏は語る。
「支援者たちをまとめるのに時間を費やすのではなく、新たな支援者の獲得や浮動票の獲得のために時間を費やすべきだ」
ある秘書が吠える。
より多くの人に楠田大蔵を知ってもらうにはどうするべきか。考えに考えた末、導き出した結論は駅頭での朝立ち、路上での辻立ちを積極化すること。地道な作業ではあるが、着実に知ってもらうためにはこの方法が最良だ、ということに落ち着いた。
告示の翌日、8月19日から、早速実行された。朝7時に選挙区内の西鉄、JRの駅4、5カ所に、それぞれ4、5名ずつが集まり、駅の周囲にノボリやポスターを設置する。その後、駅に来る人々に民主党マニフェストなどを配る。
「福岡5区、民主党の楠田大蔵をよろしくお願いいたします。いってらっしゃいませ」
と声をかけて、とにかくマニフェストを配る。自分の選挙区の民主党候補は楠田大蔵であるというイメージと、この選挙は政権選択がメインテーマであるというイメージを、一人でも多くの人に知ってもらうためだ。
楠田氏本人も駅から駅へと移り、演説をする。これを連日行なうのだ。なかには声をかけてくれる人もいる。
「今度は民主党に入れるけんね。がんばってね」
こういった声援は多く聞かれた。
なかには批判的な人もいるが、多くの人がビラを受け取ってくれて、応援していると声をかけてくれた。政権交代の風は、間違いなく吹いてはいた。
朝立ち、夕立ちを繰り返し、それぞれの駅で日を変えて何回も楠田候補をアピールする。イメージの刷り込みを狙ってのことである。
積極的なアプローチではあるが、どれほどの効果があるのかは全く見えない。後援会に入ってくれるという人があるわけではないし、ましてや一票入れてくれると念書をとるわけでもない。ただただ、声を張り上げビラを配るだけ。何となく風が吹いていることは分かるが、楠田陣営が安心することはなかった。
どこからともなく、楠田陣営劣勢とのメディアによる調査結果が伝えられる。何とかしなければ。残された時間は残り1週間となっていた。
【柳 茂嘉】
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